画像サイズ: 520×431 (82kB) | > 「風土記」には『外村繁のこと』という章立てがしてあるので、井伏さんと外村さんはかなり親しかったように思えます。そこで、外村さんをマッタク無視するわけにも行かないと思い、青空文庫で取りあえず「打ち出の小槌」というのを読んでみました。
先日、地元の図書館に依頼して置いた外村繁の「阿佐ヶ谷日記」というの、が船橋市の図書館からやっと届いた。だが、思っていたようなものでなく失望した。内容は、井伏さんの「荻窪風土記」とはマッタク違っていたのだ。
暇な時に届かないで、野暮用のある時に受け取ったので、ゆっくり読むわけには行かなかった。昭和32年、講談社で出版した単行本で、表題は「外村繁全集第6巻」。
本は返してしまったのでうろ覚えだが、なかは、父の思い出、小品随筆、評論、書簡、日記、阿佐ヶ谷日記、あとは年譜、解説と分かれていたように思う。
この小品には、例の「打ち出の小槌」が含まれる。書簡は、アメリカへ留学した長男への手紙がはいっている。これが沢山あり、それぞれが面白い。
また、書簡は日記風で、まさか後世の人が読むとは思わなかったであろうから、初めから終りまで、正直な気持ちが書き連ねてあって、ご本人にはお気の毒だが、まことに面白い。
二月五日の項に、その日の朝刊に、外村氏が新聞を開いて見ると、自分の作品「筏」が芸術院賞候補になっていた。翌六日には散歩中、佐野さんという人に会い芸術院賞候補の話で盛り上がる。十一日には、その「筏」を八千部も増刷している。よっぽど、評判が良かったのか。ところが、
二月二十八日のところを読むと「芸術院賞落第した。」と書き、「丁度それくらゐでよろしいのだろう。」とつづけ、さらに、「両手に花なんて一寸いやらしいもんな。第一僕らしくないよ、」と自らを慰めるかのような書き方をしている。
これは長男へ送った手紙なので、くやしさをモロに表現することは避けたのではないか。もうひとつ面白いのは、長男への手紙に自作のクロスワードパズルが出て来る。これが懐郷自家言葉謎綾取とあって、これに(なつかしきわがやのクロスワードパズル)のルビが振ってある。次男の和夫さんとの共同製作であるが、クロスワードをつくるとはなかなかご立派である。
これが家庭用で、よこの鍵に、君の好物だの、女子大時代の母を思はせる鳥、が出て来たりして、じつに微笑ましい。縦の鍵にも、父のケッ作、わが家に一人もないもの、なんてのがある。これは、よそ紋には、逆立ちしても、解けない態の難解パズルである。(^^♪ |