画像サイズ: 300×450 (61kB) | NASAの探査機ニュー・ホライズンが第1目標の冥王星の近傍を通過したのは昨年7月。いまは第2目標の小天体に向かっている。探査機には、冥王星の発見者クライド・トンボー(1906〜1997)の遺灰が搭載されている。生前、宇宙探査機が冥王星に行くときには遺灰も一緒にと願っていたという。
添付画像:トンボーの遺灰 金属製容器の記載文章。墓碑銘といってもいいのだろう。
Interned herein are remains of American Clyde W. Tombaugh, discoverer of Pluto and the solar system's "third zone." Adelle and Muron's boy, Patricia's husband, Annette and Alden's father, astronomer, teacher, punster, and friend: Clyde W. Tombaugh (1906-1997).
Credit: Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory
(拙訳)ここに納めたのは、冥王星および太陽系"第三領域"の発見者である米国人、クライド・W・トンボーの遺灰。 アデルとムーロンの息子、パトリシアの夫、アネットとオールデンの父、天文学者、教師、冗談好き、そして我らが友人:クライド・W・トンボー(1906-1997)。
トンボーの冥王星発見は1930年。以来70年余、冥王星は第9番惑星と考えられていた。私たちは惑星の名称と順序を「水金地火木土天海冥」と暗記したものだ。 1990年代になると、冥王星以遠に多数の天体が発見され、冥王星を含むそれら天体が惑星か否かなどの論争が起きた。2006年8月、国際天文連合の総会で惑星の定義が修正され、冥王星は準惑星に区分されることになった。
時間的に前後するが、探査機の打上げは総会の半年ほど前の1月。その時点では冥王星は惑星だったのだ。それが9年半 50億km におよぶ長旅をして見たものは準惑星への降格・・・トンボー(遺灰)は少し残念に思ったかもしれない(?)。
探査機は6月1日現在、太陽から距離53億km のところにおり、小天体 2014MU69 に速度14.4km/sで向かっている。2019年に目標の近傍通過が予定され、そのときの太陽からの距離は60億km。飛行は続くが、2026年ごろには原子力電池の出力が低下して通信が途絶するようだ。2038年には太陽からの距離が150億km になるというが、これは太陽・地球間距離の100倍にあたる。
前出の速度14.4km/s は太陽系脱出速度(第三宇宙速度)より大なので、時が経てば探査機とトンボー(遺灰)は太陽の重力圏を離れて恒星間の旅に出る。といっても系の半径は1〜3光年というから脱出には数万年を要するのであろう。 一方、探査機とトンボー(遺灰)を宇宙に送り出した現代の地球文明は数万年後にどうなっているのだろう。
参考 『かくして冥王星は降格された 第9番惑星をめぐる大論争のすべて』(ニール・ドグラース・タイソン著 2009 早川書房) 『冥王星を殺したのは私です』(マイク・ブラウン著 2012 飛鳥新社)
NASA (New Horizons) http://pluto.jhuapl.edu/ |