トランプは子供の頃、よくやった。その頃は『トランプ』が普通で、『カード』をやろう、など云う子は一人もいなかった。後年、西洋の画集などを見たりするようになって、初めてああいう遊びをカード遊びと云うのだと知った。
ちなみに、印象派の画家、ポール・セザンヌに「カード遊びをする人々」という画が何枚かあり、中でもパリのオルセーにあるのが有名だ。
アメリカの作家、マーク・トゥエインに「赤毛布外遊記」というのがあるのをご存じだろうか。文庫で3巻になっている。かれが30代の頃の作品で、かれは新大陸の代表として旧大陸を旅し、得意の毒舌を駆使して、旧大陸を縦横に切りまくる趣向になっている。
アメリカ人からすれば、小気味よい作品に見えるのかもしれないが、ヨーロッパ人や、親ヨーロッパ派にとっては、あまり後味のいいものではないかも知れない。
ところで、なぜこんなことを書くかと云えば、きょう久しぶりに、鴎外の「椋鳥通信(中)」を眺めていたら、その1910年8月6日発の項に、こんなことが書いてあった。ハイデルベルクにトゥエインの銅像が建つというニュースの紹介で、そこには建てた理由が『外国放浪記』の縁である、という説明書きがある。
その『外国放浪記』というのが、英語でTramp abroad★となっている。例の21世紀の暴言王の方は、Trumpでスペルはちがうが、辞書のtrampの項に、類音として、trumpが取り上げられているところをみると、まんざら無関係とも思えない。
なお、tramp,trumpのほか、綴りの似たのにtrampleというのもある。このトランプルは最初のトランプと同じで、放浪すると云った意味であるらしい。それで、鴎外のにも、書名がTramp abroadになっていた。
一方、あっしの蔵書「赤毛布(あかゲットと読むーモンジロウ注)外遊記」の原題は、The Innocents Abroadとなっていて、両者は別の本のようだ。イノセンツは訳者浜田政二郎氏の説明によると、田舎紋のことらしい。ところが、田舎紋の見聞記にしては、辛辣過ぎてとても、へりくだっているとは思えない。むしろ、
高飛車と云っていい態度である。今の人なら、態度、でか〜い。というところか。そういえば、次期大統領トランプ氏も、態度はでかい。なこたあまあ、どうでもいいが、
わが国に、ひとを踏みつけにするという言い回しがあるが、trampには『踏みつける』と云う意味もあるようだ。こうなると、例のドナルドさんには、TrumpよりTrampの方がふさわしいかも。(*_*)
かりに、ドナルドさんをカードに例えれば、ふつーの長方形や丸型ではなく、ジグザグに折れ曲がった、変わり型カードになるのではないか。下記参照。
裏の絵柄も多種多様で、専門書をみると、つい時間を忘れて、いつまでも飽きずに、食い入るように眺めてしまう。
また、プロの使い手によるカード・フラリッシュやカスケード、立体的な、積み木に似たカード・キャッスル。ただし、キャッスルと云ったって、NYのど真ん中にある、トランプ・タワーとは大違いだ。(^_-)
えー、ここまで大分、トランプで遊びまくりましたが、辞書ではtrumpの近くに、trumpetというのがあります。これには、トランペットを吹くという意味がある。ここで注意をして頂きたいのは、トランプが吹く、のではなく、トランペットを吹くというちがいである。奴さんも、あの調子で吹きまくっていたら、その内いつか墓穴を掘り、最期の審判を知らせるラッパlast trumpetが嚠喨と鳴り渡り、あんたの出番も、はい、それま〜で〜よ、と成らないように。こころから危惧するものである。
https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/236x/aa/df/1d/aadf1d9ed846c9579569c0d119da8ba2.jpg ★この訳語は、「外国放浪記」となっている。
当稿は日本人を含む多くのガイコク人に、トランプがあたえた、いわゆるトランプショックとは無関係、というよりそのショックを和らげる効果を見込んで書いたものである。従って読後、そのショックが幾分でも和らげられれば、筆者としてはこれに勝る喜びはない。 終わり
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