赤木昭夫著 漱石のこころ 岩波新書1633 でした。
著者によると 夏目漱石の作家としての心理状態を思いやりつつ 漱石の小説「こころ」の解説もする という一種のかけことばのつもり。
さて著者がいうには 漱石の「坊っちゃん」は風刺小説だという。
まず坊っちゃんは、冒頭で隣家の山城屋(質屋)の息子が栗泥棒に来たのをこらしめる。 松山で坊っちゃんが泊まった宿も山城屋 つまり山城屋にこだわったいる。 キーワードは山城屋。
山城屋事件 1872年(明治5年)に陸軍省の御用商人山城屋和助が、陸軍省から無担保で借り受けた公金を返済できず自殺した事件。 山城屋和助は長州藩出身という縁故で兵部省御用商人となり、軍需品の納入などにたずさわっていた。 まもなく、陸軍省の公金15万ドルを借用して生糸相場に手を出した。 (もっと儲けようとして失敗)
薩長の明治政府が、自分たちにいいように政治権力を利用した。御用商人の暗躍。
つまり 校長(狸)→山県有朋 教頭(赤シャツ)→西園寺公望 野太鼓→桂太郎
彼らの権力をかさに弱い者いじめをしたり不正をするのを こらしめる山嵐は会津代表 そして坊っちゃんは江戸っ子代表。 山嵐も坊っちゃんも、明治政府でいばって私腹を肥やす薩長高級官僚たちに天誅を与えるという筋書きになっている。
それって少し読み過ぎの感もあるが、まあ「坊っちゃん」をそういうふうに読めないこともない。
江戸っ子からすれば、薩長の田舎侍たちが乗り込んできて狼藉三昧。 なんだこいつらはと思ったのだろう。 もちろん、日本の将来を真面目に考えていた政府官僚たちもいたのだろうが。
西郷隆盛は地位もお金も名誉も捨てていたから、今も評価されているのだろう。
しかし、漱石も危なかった。 木下尚江は「火の柱」の中で伊藤博文を非難していた。
中里介山は巧妙に「大菩薩峠」で、政治批判をした?
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