画像サイズ: 490×389 (75kB) | 男爵さん、みなさん、こんにちは。
ハイネというと、あっしには思い出すことがある。じつは今、拠無い事情があって、終活中であるが、蔵書の整理で、つい昨日、ハイネの訳詩集を出してしまった。
しかし、原書のBuch der Liederだけはたとえ、ピストルで脅されても絶対にどこへも出さない。
ところで、学生時代、英語の先生はチョット変わった方で、英語の担当なのに授業中にこのドイツ語の詩、春の来た喜びを素直に歌った『美しき五月に』を教えてくださった。大昔のことなので出だしのところしか覚えていない。あっしらの頃は、ドイツ語はすべて髯文字だった。今手元にあるのは、だいぶ時がたってから手に入れたもので、茶色の表紙の、いわゆるレクラム文庫だ。日本の岩波文庫は、これをそっくり真似た。今ではドイツでも、ひげ文字のレクラム文庫はどこへ行っても、売っていない。実は、この本については、もうひとつ、思い出がまつわりついている。
それは、本に貼ってある小さなシールで、東京泰文堂と書いてある。これはその本を売った古書店の名前で、もうこの店主は、とっくに店をたたんで神保町にそう云う屋号を持った店はない。店主も相当昔に、他界されたはずだ。本には最後尾に、もう一枚シールが貼ってあり、それには渋谷道玄坂、近藤書店と記されている。
つまり、泰文堂が店じまいした時、近藤書店が残りものを買い取ったものの一部なのだろう。そこで、先生の教えて下さった詩を探そうとしたが、同書は200ページ以上もあるうえ、例のひげ文字で、捜索は困難を極めた。ひとつには、この詩というのが、鉄道唱歌ではないが、何と65番まである。このフレーズは、その内の1番なのだが、その前に、長いプロローグがついている。もちろん、巻末に字引が付いているが、このプロローグの出だしを知らなければ、マッタク役に立たない。
ちなみに、この詩集には、日本人なら誰でも知っている「ローレライ」も収録されている。字引の該当箇所を見ると、元の持ち主が出だしのIch weiss nicht,was soll es 93(ぺージ)のところに、鉛筆で、しっかり印をつけていた。ローレライは、「歌の本」の中でも、」帰郷(Die Heimkehr)という詩集の中に出て来る。
あっしも、暇に任せて、この文庫をあれこれ探索してみたが、たしかに、詩の出だしさえきちんと覚えていれば、慣れた人には、うろ覚えの詩句を探し出すのは、それほど困難なことではないのだろうと思う。 終わり |