河田恵昭:津波災害 岩波新書1286
2010年12月に出た本。 この3か月後に千年に一度という 大津波が起こった。
この本の出版は、2010年2月27日のチリ沖地震津波がきっかけである。 約168万人の住民に避難指示・避難勧告が出されたが 実際に避難した人は3.8%の約64000人にすぎなかった。
これではとんでもないことになる と警告する意味で出した本であったが その後の大津波の時にも、逃げ遅れた大勢の人々がいた。 だから大惨事となった。
避難すれば、命だけは助かるのである。
津波は、高い波というより、速い流れである。
津波が護岸や防波堤に衝突すると 前進できず運動が止まるから海面が盛り上がり 理論的には衝突前の1.5倍くらいに高くなる。 高さ4メートルの津波がやってきても護岸や堤防の高さが5メートル あれば大丈夫ではなく、高さ4メートルの津波は6メートル近くになる。
二階建て家屋では、浮いた家具が一階の天井に当たるようになると 急激に浮力が働き、家全体が浮上して流失されやすくなる。 浸水深が2メートルになり、流速が毎秒4メートルを超えると 住宅は浮上し流される。
鉄筋コンクリート造りの建物では 2004年インド洋大津波でタイ・カオラックの三階建ての鉄筋コンクリート造り のホテルは倒壊しなかった。 毎秒8メートルの津波でも、鉄筋コンクリートの柱は十分破壊に耐えている。 我が国の避難ビルの選定では、三階建て以上の鉄筋コンクリート造りの建物を 指定しているのは妥当である。
避難は徒歩が原則 車で逃げても、踏切の遮断機が停電で下りたままのこともある。 山道で先に車が止まっていれば先に進まれず津波に追いつかれる。 車をすてて逃げる覚悟が必要。
でも 高齢者や幼児がいると、足元の危ない道を走るのは困難。 車が必要な場合もある。
普段から訓練して慣れたことはできるが、慣れないことはできない。
この本と今回の東日本大震災委を教訓に 津波対策を根本的に見直さなくてはならない。
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