松葉仁:ケータイのなかの欲望 文春新書223
小説の中で携帯電話が犯罪の小道具として使われたのは 高村薫「レディ・ジョーカー」(1997) ビール会社の社長が恐喝を受け、犯人と連絡を取るのに 社内の有線電話を避けて携帯電話を使う場面が出てくる。 警察に犯人とのやりとりを聞かれたくないから。
事実は小説よりももっと先んじていた。 1991年に起きた富士銀行員誘拐事件では、犯人は銀行側に対し 携帯電話を用意するよう繰り返して要求している。 さらに「携帯の提供はNTTに頼むな。細工されて逆探知されるからな」 など注文がつけられている。 携帯電話から逆探知するには、一般の有線電話にくらべて経由する NTTの無線中継局が多くなるため、それだけ時間がかかる。 犯人は1991年でも、もう携帯電話は逆探知されにくいことを知っていた。
目次から 第一章 携帯電話が誕生するまで 第二章 携帯電話の普及 第三章 乱売合戦の果てに 第四章 携帯電話の事件簿 「悪のツール」携帯たちの悲哀 第五章 携帯電話の落とし穴 人体・社会とのあつれき ペースメーカーの誤動作 電波は人体に有害か? 第六章 ケータイが変えた若者文化 若者たちは待ち合わせをしなくなった 迷惑な車中や劇場の携帯電話 第七章 iモードの爆発 第八章 ケータイの未来 次世代携帯電話 第三世代の登場 家電リモコンや財布がわり
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