みなさん、こんばんは。あのまだ、髪の毛も、それから血の気も多かった青春時代、大抵の方は詩集を読んだり、詩を愛唱されたりしたのではないでしょうか。
『まだあげ初めし前髪の』、とか『巷に雨の降るごとく』とか、それぞれ思い思いの愛唱歌、応援歌があったのでは。
あっしも若い頃は、一丁前に、現代詩人全集なんかを、読みふけったこともありやした。
上田敏の「海潮音」を開いて、この書が森鴎外に献じられていたことも知りました。鴎外には、訳詩集はないと思いましたが、外国の小説の翻訳である「諸国物語」はあります。ここには、ドストエフスキーの初期の短編「鰐」も収録されています。
永井荷風の訳詩集「珊瑚集」も捨てがたいし、ボードレールの「悪の華」を愛蔵されている方も、あるのではないでしょうか。
アメリカのホイットマンが持てはやされた時期もあれば、ワーズワースが流行ったこともあったような。
さいきんは、 金子みすず、ですか。あっしは、もともと象徴派の詩人でありながら、歌謡曲にいい歌をたくさん残してくれた西条八十も、好きです。幅がフシギなほど、広いひとですよね。
『青い山脈』から、『ゲイシャ・ワルツ』、『蘇州夜曲』から、『王将』、『トンコ節』と。
八十さんは、あのはち切れんばかりに明るい「青い山脈」の陰で、実はこんなコワ〜イのも書いていたんですね。
「児を貰はう」 「児を貰はう」 嗄(しはが)れた凩の声の 聞えわたる冬の夜半。
「子供はひとり先日(こなひだ)あげました、 あれでもう宥して下さい。」 私と妻とは悲しく答へて 畏れに堅く抱き合ふ。
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