画像サイズ: 360×510 (50kB) | 旅行記と云うことばの軽さから、ついその内容まで物見遊山的なものを想像させてしまいがちだが、この旅はかれゲーテにとって重要な意味をもっていたようだ。
出発直前のゲーテは実生活の上でも創作の面でも、大きな壁にぶち当たっていたらしい。
二年そこそこの旅が、かれの前に立ちふさがるこの壁を打ち砕いてくれたのだと思う。
訳本は上、中、下とかなりの量があるので、感想をまとめるのも難しいが、あっしは中巻の、シチーリア訪問。
あっしには、イギリス人に化けたゲーテが、案内者とともにあの有名な詐欺師カリオストロの家族に会い、そのときの状況を事細かに書き綴った個所がいちばん興味深い。
このときゲーテは完全にイギリス人になりすまし家族に会うのだが、ゲーテこそ近頃かまびすしく云われる『成りすまし』の元祖ではないかと、あっしには思われた。
ゲーテにとってのイタリア語は、既知の言語で、その方言は別として、標準語なら苦労なしに、すらすらと話せたらしい。 |