[No.756]
Re: 回想 太宰治
投稿者:男爵
投稿日:2011/12/25(Sun) 08:23
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著者の同僚の編集者が
ある水商売の女性と交際していたときのこと
太宰は、彼に、「女を取るか太宰を取るか」とせまった。
まるで泉鏡花の女系図である。
太宰は、結婚するなら両親の揃ったちゃんとした家庭の娘を嫁にしろと言った。
太宰にそむいた編集者は、その女と結婚して幸せな家庭を持ったという。
太宰の「きりぎりす」は
貧しくても純粋だった夫が、絵が売れるようになると俗っぽくなっていく姿に
妻が幻滅する話である。
これを著者の仲間は、「人が人を愛することはむずかしい」ということが書いてあると言う。
著者の仲間が言うには
妻が本当に夫を愛しているなら
夫が好きな絵を描いて売れなくても愛するだろうし
売れて世間に迎合して堕落しても愛すべきではないかというのだ。
結局のところ、妻はかくあるべしという夫を愛していて
生身の欠点の多い夫を愛していたのではない、現実に存在しない理想の夫を愛していたのではないかというのである。
だとすると理想も夢もなくなる。
人が相手に希望をもったり、何か将来に期待してはいけないのだろうか。