サザエさんの漫画は 昭和の日本人の生活やものの考え方を反映していて 貴重な文化資料だという人がいます。
たとえば 目に見えて大きな変化は、家庭の中に便利な道具・家具が 昭和30年代後半から急激に増え 家の中はピカピカ美しく、主婦の家事が合理化されたことである。
20年代、サザエさんの台所の火は、いわゆる七輪である。 新聞紙、タキギ、消し炭の順で、家の外で火をおこしてから台所に運び込まれたに違いない。 七輪は台所の床に置かれ,サザエさんはその前にしゃがみ込んで、すいとんの鍋などをかき回している。
ある日、台所にガスが引かれ、ギザギザのついたガスコンロが台の上に置かれている。 まだ、ガス台の上にはダルマさんのお尻のような釜がデンと置かれ、ごはんの湯気をたてている。
そしてまた数年、ある日のサザエさんの台所は、ステンレスで統一された調理台、自動点火、オーブンつきガスレンジが光っている。
そして、ネコがフタの上に寝そべっていたおひつは電気ガマに、氷冷蔵庫は電気冷蔵庫に代わった。
磯野家の食事どき、家族はチャブ台を囲んで座っていたが、それも万博の近づく40年代中ごろからは、ダイニングキッチンにかわっている。
以上は樋口恵子の文章だが、女性の目から具体的に述べられている。
話は違うが ある中国料理の体験の本を読むと おいしい料理がつくられる厨房をのぞいてみると 七輪だけだった。 ガスコンロなどなかった。
要するに、調理器具よりは料理人の腕なのだということ。 昔ながらの七輪で出せる(ベテランの)味は、ガスコンロを与えられた(味の修業の未熟な)若い料理人ではまだ出せないのである。
といっても 戦後の便利な厨房製品のおかげで 女たちは自由につかえる時間がたくさん得られることになった。
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