戦後も大分過ぎた頃のお話、1990年頃だったろうか、
台北の公園を散歩していたら紙飛行機を飛ばしている異様な風体の老人がいた。
台湾にも紙飛行機があるのかと何気なく見ていた。
紙飛行機を拝むようにしてツンツンして飛ばす、そして空を見上げる。
せいぜい7、8mしか飛ばない飛行機に歩み寄ってまた同じことを何度も何度も一心不乱に繰り返す。
明らかに普通の人ではないな、と眺めていると其の老人が近寄ってきて私に話し掛けて来た。
目が据わっていて若干恐怖を感じる。
「あなた、日本人だよね、見れば直ぐ分かるよ」
ちゃんとした日本語だった。
自分は何処の生まれでどういうものだ、と語り出したようだった。
殆ど覚えていないがしっかりと記憶に残っている言葉がある。
「私の先生は日本人の女先生だったんだよ、その先生から紙飛行機の作り方を教わったんだよ、
優しい先生だったよ。だけどなぁー、、」
益々据わって来た目で私の目を覗き込む、ちょっと恐怖を感じてその場を離れた。
何か本能的に、切ない話が続くような気もした。
今にして思うともっとお話を聞いてあげれば良かったと切に心残りだ。
- Joyful Note -