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[No.7548] 皇帝と革命 投稿者:KANCHAN  投稿日:2016/03/26(Sat) 20:19
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皇帝と革命
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 3月19日、錦糸町にある「すみだトリフォニーホール」に小林研一郎指揮のフィルハーモニックアンサンブル管弦楽団のコンサートを聴きに行って来た。

 演目は仲道郁代の弾くベートーベンのピアノコンチェルト第五番「皇帝」と、ショスタコ―ビッチの交響曲第五番「革命」である。二つとも私にとっては思い出深い曲である。(私が行くコンサートは大体そういうものである)

 「皇帝」は私が高校に入ったころ、本家の伯父のレコードアルバムで聴いた。以降機会があるたびに繰り返し聴いてきた懐かしい曲である。しかし、実は生の演奏を聴くチャンスはなかなか無い。当代の人気ピアニストの演奏をわくわくしながら楽しんだ。

 「革命」は、同じころ冒頭部分がNHKのある連続ラジオドラマのテーマ音楽になっていた。題名は覚えていないが、社会に出たばかりの若者群像の物語であった。当時ソビエト連邦は、朝鮮戦争を仕掛けた張本人とはいえ、ある種畏敬の目で見られていた。

 実は両曲とも、私のiPadに入っていて、イヤホーンでよく聞いている。この曲を生で聴くのは初めてだ。そして、一般の弦や管だけでなく、ハープや打楽器をフルに使いこなすこの曲を、時にピーンと張り詰めた緊張感の中で聴き入り、時に壮大な勝利の響きに圧倒され感激したものである。(7/16に江東公会堂での演奏がある)

 クラシック音楽を聴く面白さの一つは、その曲の生まれた時代的な背景を探るということがある。

 「皇帝」はベートーベン自身がつけたタイトルではないという。しかし交響曲「英雄」がナポレオンに捧げようとして作曲され、次第に爪を現わにしてきた野心家に腹を立てお蔵入りさせたという話があるが、この曲は、オーストリア皇帝、ロシア皇帝の冠が燦然と輝いていた時代の作品である(1809)。

 一方「革命」はスターリンの圧政下で作曲され、革命20周年の記念式典(1937)に初演された。当時のソビエト人民に圧倒的な喝采を浴びたという。

 ショスタコ―ビッチは共産主義政権の芸術への干渉に振り回された。初期の作品が反革命のやり玉にあがることを恐れながら、生き残りをかけてこの曲を作曲した。芸術家としての葛藤については、種々の資料が残っている。

 「革命」というタイトルも、作曲家自身が付けたものではないという。そして、現在西欧諸国で演奏される時は、単に交響曲第5番としてのみ呼ばれているという。

 而して今回、小林研一郎が「皇帝」「革命」と並べると絵になったものだ。「革命」を経て「皇帝」の冠が抹殺された歴史を思う。

 そこで、今中国で「革命」交響曲が演奏されることがあるのかと疑問に思った。この曲は両刃の剣ではないか?いや、彼等に芸術を鑑賞する余裕など無いのかも知れない。

(2016.3.26)


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