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[No.7874] 評伝菊田一夫 投稿者:男爵   投稿日:2017/05/25(Thu) 16:19
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小幡欣治:評伝菊田一夫  岩波書店

菊田一夫の自伝は読んだことがあるが、これは他人が書いた菊田一夫の一生。

著者は、菊田一夫から指導を受けたりしたことがあるが、弟子だとは思っていないとこだわっている。
でも、菊田一夫から影響を受けたことは認めているし、菊田一夫については知っていることは多いとして、人から勧められるまま、この本を書いたと断っている。

たとえば、サトウハチロー伝にも菊田一夫のことは出てくる。
二人の関係は深い。サトウハチローの家庭内のごたごたがあったとき、菊田一夫は彼のことをかばった発言をしていた。

菊田一夫の人生の進路に影響を与えた人びと
   尾形美也子 サトウハチロー 榎本健一 古川ロッパ

そのときだけの繋がりがあって、あとは関係がなくなった人
そういう人が人生には何人かある。
それでも、当人にとって(あの人は)人生のガイドだったと後から気づくことがある。

あの人のおかげで
その後の人生の方向が変わった、結局自分の人生が開けた。

そういう人がいることについて、曽野綾子がうまくまとめていた。

さて、菊田一夫をめぐる女性たち
自伝にはなかなか出てこない女性たちだが、この本の著者はなるべく客観的に、そして戸籍なども参照して正確に書こうとしている。
戸籍調べは現在はプライバシーもあって、むずかしそう。

前妻高杉妙子(長女伊寧子・次女美寧子) 本妻能勢妙子(長男一樹・次男大介) 浦島千歌子 西尾恵美子

高杉妙子との結婚の前に、菊田は妻がいて男女二人の子供もいたようだが、その子供たちは死んで戸籍もわからないという。菊田もそのことは誰にも言わなかった。

菊田伊寧子は父親について語っていたので、その名前はよく知られている。

彼の仕事について、批評家は辛口だったが、大衆は支持していた。
ある作家も書いていたが、批評家がほめる作品は売れなくて、批評家がけなしても読者の多い作品は売れるから出版社が喜ぶ。

一生、そのときどき受ける作品を続けることのむずかしさ。

ベートーベンやモーツァルトの作品も、いつも批評家から好評を受けたわけではなかった。評価は時代によって変わる。