画像サイズ: 490×436 (71kB) | 大学の頃、英語を教わったA先生という方があった。この先生はときどき、担当の英書講読を忘れて、大いに脱線されたが、ある日、上掲の詩集にある、ある詩のフレーズを教えて下さった。
その後だいぶ経って、ぜひとも、それが載っている本を手に入れたいと思っていたが、なかなか果たせなかった。
そのうち、神保町の古書街でついに見つけた。なにしろ、分かっているのは作者の、ハインリッヒ・ハイネと云う名前だけだった。収めらている詩集の名前も、詩の題名も知らなかったのだ。
音痴の紋爺はいま初めて知ったが、この詩を含むハイネの『抒情的間奏曲』はのちにロベルト・シューマンによって曲をつけられ、「詩人の恋」として生まれ変わった由。
この詩編は、つごう20篇の大作で、シューマンはその内の、16篇に曲をつけたらしい。あっしの聞いたのは、その内の最初の一篇『美しい五月には』であった。
Im wunderschoenen Monat Mai, Als alle Knospen sprangen, Da ist in meinem Herzen Die Liebe aufgegangen. Im wunderschoenen Monat Mai, Als alle Voegel sangen, Da hab' ich ihr gestanden Mein Sehnen und Verlangen.
この古書店も廃業して、今はない。しかし、知る人ぞ知る、洋書専門店だった。名を『東京泰文社』といった。まず、何語であれ、洋書であれば、ここへ来れば、ないものはなかった。 |