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[No.625] 演歌の明治大正史 投稿者:男爵  投稿日:2011/12/17(Sat) 17:32
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演歌の明治大正史

著者添田知道は添田唖蝉坊の息子なので
添田唖蝉坊の歌が多い。

       ああわからない
ああわからないわからない 今の浮世はわからない
文明開化というけれど   表面(うわべ)ばかりじゃわからない
瓦斯や電気は立派でも   蒸汽の力は便利でも
メッキ細工か天ぷらか   見かけ倒しの夏玉子
人は不景気不景気と    泣き言ばかり繰返し
年がら年中火の車     廻しているのがわからない

ああわからないわからない 乞食に捨子に発狂者
スリにマンビキカッパライ 強盗窃盗詐欺取財
私通姦通無理心中     同盟罷工や失業者
自殺や餓死凍え死     女房殺しや親殺し
夫殺しや主(しゅう)殺し 目もあてられぬ事故(こと)ばかり
むやみやたらに出来るのが なぜに開化か文明か

ああわからないわからない 金持なんぞはわからない
贅沢三昧仕放題      妾をかこふて酒のんで
毎日遊んで居りながら   金がだんだん増えるのに
働く者はあくせくと    流す血の汗あぶら汗
夢中になって働いて    貧乏するのがわからない
貧乏人のふえるのが    なぜに開化か文明か

ああわからないわからない 賢い人がなんぼでも
ある世の中に馬鹿者が   議員になるのがわからない
議員というのは名ばかりで 間ぬけで腑ぬけで腰ぬけで
いつもぼんやり椅子の番  唖かつんぼかわからない

ああわからないわからない 今の坊主はわからない
殊勝な面でごまかして   寝言念仏ねむくなる
女をみだぶつ法蓮華経   それも白髪のぢいさんや
ばあさんたちが巾着を   はたく心がわからない

ああわからないわからない 耶蘇の坊主もわからない
飯も食べない人たちに   アーメンソーメンうんどんを
食わせるなればよいけれど 聞かせるばかりで何になる
何も食わずにお前らの   まずい説教がきかれよか

ああわからないわからない 今のお医者はわからない
仁術なんぞといふけれど  本職はお止めでたいこもち
千代萩ではあるまいし   竹に雀の気が知れん
貧乏人を見殺しに     してゐる心がわからない

ああわからないわからない 弁護士なんぞもわからない
おだてて訴訟をおこさせて 原告被告のなれあひで
何をするのかわからない  勝つも負けるも人の事
報酬貪ることばかり    何が義侠かわからない


[No.626] Re: 演歌の明治大正史 投稿者:男爵  投稿日:2011/12/17(Sat) 17:40
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> 演歌の明治大正史
>
> 著者添田知道は添田唖蝉坊の息子なので
> 添田唖蝉坊の歌が多い。

       ああ金の世
ああ金の世や金の世や     地獄の沙汰も金次第
笑ふも金よ泣くも金      一も二も金三も金
親子の中を割くも金      夫婦の縁を切るも金
強欲非道と譏(そし)らうが  我利我利亡者と罵(ののし)ろが
痛くも痒くもあるものか    金になりさへすればよい
人の難儀や迷惑に       遠慮してゐちゃ身が立たぬ

ああ金の世や金の世や       希望(ねがい)は聖き労働の
我に手足はありながら       見えぬくさりに繋がれて
朝から晩まで絶間なく       こき使はれて疲れはて
人生(ひと)の味よむ暇もない   これが自由の動物か

ああ金の世や金の世や       牛馬に生れて来たならば
あたら頭を下げずとも       いらぬお世辞を言はずとも
すむであらうに人間と       生れた因果の人力車夫(くるまひき)
やぶれ提灯股にして        ふるひをののくいぢらしさ

ああ金の世や金の世や       この寒ぞらにこの薄着
こらへ切れない空腹(すきはら)も なまじ命のあるからと
思ひ切ってはみたものの      齢(とし)とる親や病める妻
飢ゑて泣く子にすがられて     死ぬにも死なれぬ切なさよ

ああ金の世や金の世や       憐れな民を救ふべき
尊き教への田にさへる       我儘勝手の水を引く
これも何ゆゑお金ゆゑ       あああさましの金の世や
長兵衛宗五郎何処に居る      大塩マルクス何処に居る


[No.627] Re: 演歌の明治大正史 投稿者:男爵  投稿日:2011/12/17(Sat) 17:44
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スカラーソング

都に名高き須田町の 電車通りを眺むれば
今は昔武蔵ケ原の 面影いづこベルの音高く
走れる電車の割引乗らんと 喧嘩腰の労働者
田舎の田吾作老爺(おやじ)が 赤い毛布(けっと)をぐるぐる巻いて
おらハの行くとこァどこだんべ 杢兵衛さんよ早く来さっせブン乗りはぐれちゃ大変(てえへん)だ
生き馬の目をぬく東京チュウは 大道歩くも電車に乗るのも
命があぶねえ気をつけさっせ おらハァぶったまげただよ二十二形の時計が無(ね)え
    (神長瞭月詞 唱歌「箱根山」の曲で)

なぎらけんいちが歌っていた。