[No.5467]
キルギスの参考文献
投稿者:男爵
投稿日:2017/05/15(Mon) 05:15
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この旅行の後
同行した人から下記の文献を教えてもらった。
田中哲二:キルギス大統領顧問日記、中公新書1570
2001年1月に発行された本なので、内容は新しい。ここに少し紹介する。
●キルギス人の宗教
スンニー派イスラム教が主流であるが、一般家庭では定時のお祈りをすることもなく、
酒も禁止されていない。一部にはロシア正教も見られる。冠婚葬祭にはむしろアニミズム
的要素が多分に見られる。聖なる樹への願掛けの結びは日本の神社で見られるのとまったく
同じである。
我々もイシクル潮に行く途中で、聖なる樹に白い細い布を結びつけて旅の安全を祈った
ものである。
●ミハイル・フルンゼ
ビシュケクが一時期、この地に生まれた英雄の名をとってフルンゼと呼ばれた。
フレンゼとはモルダビア語で「緑の葉」の意味であり、フルンゼの先祖はモルダビア人
である。モルダビア人はウクライナの南に住む民族で、ルーマニア人と言語・文化の面で
近い。歴史的にモルダビア人とルーマニア人の結びつきが強かったので、ソ連はモルダビア
共和国とルーマニアが再び統一へと向かうことのないように注意を払い、特にモルダビアに
対して徹底的な弾圧を加えた。
●中国の核実験
中国の核実験は、新疆ウイグル自治区で、春の終わりから夏にかけて、東風や東南風が
吹くときに行われる。放射能の影響が中国本土の方におよばないようにとの配慮である。
その結果、核実験の後にキルギスの放射能が高くなるという。中国を怒らせたり、国民に
反中国の火をつけてしまうことを恐れている大統領は、目立った行動はとれない。
ロシアの核実験もあるので、ロシアに抗議してロシアのうしろだてを無くすことも問題で
ある。「日本は中国にODAを供与しているから、環境問題の観点から中国に核実験の
中止を勧告してほしい」と言われた著者は、これを日本政府に伝えた。1995年8月に
河野外務大臣のとき、核実験問題をとりあげ対中経済援助を一時棚上げしたことがある。
その後ロブノールの実験を中止したのは、著者の努力が無駄でなかったかもしれない。