どうでもいいことにこだわる著者
「avocado = アボカード」はなぜ「アボガド」となるのか、スペイン語の V=Bだから「アヴォカード」とは表記できないが、一方の「C」が「G」に変わることはありえない。
二年前イタリアで四人連れで某空港の珈琲カウンターにおいて 「クワトゥロ・エスプレッソ」と注文したら、ラニョリータがにっこりして 「クワトゥロ・エスプレッシ?」と反問された。
土筆料理は、酢の物から佃煮まで、数えれば十種類以上あるだろう。 どう料理するにしろ、あの野草の味わいの命は、長円錐形の頭部、嚢穂(のうすい)と呼ばれる部分の、微妙な苦味と歯ごたえ、舌ざわりにある。 茎の部分だけならほかにも、いくらも似たようなものはあるが、嚢穂の風味は何ものにも代えがたい。 この著者は卵とじを最高とする。舌の味蕾(みらい)を軽くくすぐるようなほろ苦さが、卵黄と卵白の膜をかむることによって、快く強調される。味付けはもちろん極度に淡くする。
ホウレンソウ(学名:Spinacia oleracea)は、中国では菠薐草とも波斯草とも書くが、どちらも日本では使われない。 ペルシアからシルクロード経由で伝わったからであろう。
目箒とは、イタリア料理の添え物によく使われるバジリコのこと。 名前のいわれは、この草、一見青紫蘇にそっくりで、花も実も酷似しているが、バジリコの実は、種子の表面が、湿りを帯びるとゼラチン状にふくれる。 目の中に入れるとその作用で、ごみなどをとってくれるので、この名がついたというが、単に物理的な作用のみでなく、この草にはシネオールやロリナールなどの薬成分が含まれているので、漢方では「光明子」と称して眼薬に用い、ヨーロッパでは頭痛薬にするという。
柿は日本のものが有名でヨーロッパにも売っている。 イタリアでは渋柿をそのまま店頭に並べ、人々は買って帰って、熟柿になるまで保存して食べるという。柿はChachi。 この市に蛤貝も柿も売るカキ・ジャポネエと札を立てたり 斎藤茂吉 大正13年の秋、茂吉はパリの市場で柿を見つけて珍しそうにこう歌った。 イタリアと違って、フランス語はKAKIとローマ字通りで辞書にも載っている。
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