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[No.15592] 福祉事務所新米公務員奮戦記 投稿者:男爵  投稿日:2010/08/03(Tue) 12:24
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一年で金融機関の仕事がイヤになって公務員試験を受け
東京のとある区役所に入ることができた著者は
転職した理由をまず述べる。
あまりに金儲けに走る某民間企業の論理に意味をみつけられなかったから。
一企業の利益を考えて仕事をするのではなく、人の役に立ち、なおかつそれで給料をもらえる公務員がとても魅力あるように思えたのである。
公務員は楽だという打算もなくはなかったが。

公務員になるなら一番住民に近い役所に入ろうと考えた著者は
その希望どおりといおうか、「福祉事務所勤務を命ずる」という辞令を受けた。
しかし、何をする仕事かわからなかった。
それは生活保護を受ける人たちに対応する仕事なのであるが
係長から「君にはケースワーカーをやってもらう」と言われた。

初仕事は
「昨日住所不定が救急車で運ばれたんだが、入院できる病院がなくて、ドヤに入れたんだよ。今日は一つ入院できる病院があるんで、先輩と一緒に行ってドヤから病院まで付き添っていってよ」と言われ、
そもそもドヤとは何かも知らない著者は、何をするのかわからないが一緒に車に乗り込む。
ドヤは暗く異臭の漂うところだった。つれてくるべき住所不定の男は体を悪くしたせいかベッドが汚れていた。
ドヤのおかみさんは男をはだかにして体を拭いてやり下着を着替えさせた。階段を一人では下りられない男をみんなで抱えるようにして階段をおろし、なんとか病院に連れて行く。
そこでも男の下着はもう汚れていた。看護婦さんが風呂場で男の体を洗うのを見て、この著者は驚くやら感動するやら。

仕事に慣れるまでに、著者はどれだけカルチャーショックを受けたろうか。
以下に事務所の中の会話を紹介しよう。
「もしもし、あの、福祉事務所の○○ですけど。今日そちらの病院で亡くなった××さんの身内、お骨を絶対引き取りたくないっていうんですよ。それで、無縁仏でお願いしたいっていうんですけれど、大丈夫ですかね」
「あのね、先週日曜日に、お金渡したばっかりでしょう。何で、もうないの。 えっ飲んじゃったって。だって、もうお金ないよ。これから、どうやって一ヶ月やっていくの」
「そ、そうなんですよ。この人タチ悪いんですよ。ちょっと調子悪いとすぐ路上で倒れて、救急車をまわりの人に呼ばせて。救急隊でも注意してるらしいんですけれど」
「係長、あの息子、昨日家で包丁を振り回したんですって。それでね、お母さんが怖がっちゃって、警察に連絡したんですって。でもよかったですよ、強制入院になりましたから。お母さんもひと安心ですよ」
「いやーびっくりしましたよ。あそこ母子家庭なんですけどね。お母さんが昨日来て、言うんですよ。子供ができたって」
ほかにも
亡くなった○△さんの秋田の実家に確認したら、あちらではお骨を4センチ四方の箱に入れて納骨するというので、そのように箱に入れて宅配便で送ってほしいと葬儀屋に電話で頼む例も紹介してあった。

生活保護を受けている上品な女性が病気になったので病院に入院させて
ただ一人の身寄りの弟に来てもらって話を聞くと、この女性は(遺産相続の結果)故郷に山を持っていた上、外貨貯金をしていたことが発覚する。

言葉のできない、日本の文化にまったく慣れていない中国残留孤児たちの苦労の生活を見た著者は、大学に学士入学し関係知識を得ようとしたり、中国に渡り語学の短期留学もする。

そのうち著者も面接担当の仕事をするようになるが、相手は海千山千のツワモノで
著者がなんとなくおかしいと思う相手は、先輩からみれば絶対うそをついているはずとけんとうをつけられ
取調べではないが先輩の厳しい面接が繰り返され、とうとうくだんの面接者は事務所の中で暴れだす。
課長の判断で警察がきて、男の体から、生活保護受給者がもっている東京都の乗り物の無料パスが発見され、そこの写真は本人の顔であるが名前は別人であった。
なんと、この男は隣の区で生活保護を受けていたのであった。

ドヤ街とはどんなところであろうか。
ここに探訪記があります。
http://stakano.hp.infoseek.co.jp/v96/v96.htm
私も参考にしました。
テレビでも
ワールドカップで安い宿泊所を探す外国人が利用したというニュースが流れましたね。

この著者が書いているように
「もし今、自分が相手の立場だったら」という考えはどこかにもっておかなければならないだろう。
立場が逆転することだってあり得るのだから。ケースワーカーだからといって、いかにも自分が偉いと勘違いしてしまう人がいるが、それは違う、と著者は書いている。

これは東京での話だが、大阪のレポートなら、また違うのだろうか。