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[No.15946] 中国農村崩壊 投稿者:男爵  投稿日:2010/10/20(Wed) 06:19
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李昌平著
北村稔・周徳訳
NHK出版(2004.6) 

中国の農村がいま崩壊の危機に瀕している。
日本の農家にとり、中国の低価格の農産物は脅威そのもの。
 2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博と上り調子の中国だが、その陰にひそむ農村の崩壊。

中国には3つの主義がある。東北地方国有企業の社会主義、沿海部大都市の資本主義、そして内陸部農村の封建主義である。(あながちジョークとばかりいいきれないものがある)

人民公社の解体で、農村に新たな行政機構が作られると、多くの地域で、権力をもつ土着の勢力がうまみのあるポストをほとんど独占し、その特権を利用して、一般の農民から金を徴収しようと画策するようになった。
そうした農村では、土着の勢力の汚職や職権乱用も蔓延しており、警察に訴えようにも、警察の幹部に権力をもつ勢力がいては、どうにもならない。農村には、こうした腐敗した権力構造への不満が渦巻く。

仮に不正がなくても、農民が実際に受ける経済的な負担は極めて大きい。その最たるものが、課税の最低基準がなく、幼児から老人まで一律に課せられる「人頭税」のような農業税である。さらに、農業特産品税、基本請負負担金、宅地使用料など、行政機構が農民からカネをむしりとる仕組みが次々に作られてきた。

登小平が、人民公社の解体を進めたのは、本来農民にある程度の自主裁量権を与え、農業生産への意欲を高めるねらいがあった。しかし、人民公社の代わりに作られた、郷、鎮、村などの地方行政組織が、次第に肥大化し、農民に多くの負担を強いるようになった。特に貧しい内陸部の農村では、皮肉にもこうした負担が逆に、生産意欲を削いでしまうというマイナスの効果になってきている。

天安門事件の裏には、激しいインフレへの不満があったとされる。それ以来、都市の人々の収入が増加しても、食料品の値段は安く押さえられた。当然、都市の市民と農民との所得格差は拡大する。しかも農民の現金収入の半分以上は、都市への出稼ぎで得られるものだという。

こうした内陸農村部からの出稼ぎが期待できるからこそ、沿海部に展開する企業が、長年にわたって安い労働コストを維持できたと言える。労働者の賃上げ要求は断って、内陸部の農村から安い賃金の出稼ぎ労働者を代わりに雇えばよい。大都市の豪華マンションは、こうした出稼ぎ労働者の安い賃金に支えられてきた。

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この本で指摘されたことが
いま問題になっているようだ。
社会主義経済をすてて自由経済に移行したため
貧富の差が拡大し、地域格差も大きくなって
貧しい階層の人たちの不満が、どこに向けられるのだろうか。