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[No.16057] 樋口恵子:盛年 投稿者:男爵  投稿日:2010/11/07(Sun) 08:48
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 老いてますます....

「老人と海」の主人公サンチャゴ老人には、自立とゆとりの精神を両立させた
理想的な姿が見られる。
その自立とゆとりを両立させた鍵は、彼が漁師という職業を終始持ち続けたこ
とだと思う。

さて、高齢者向けの仕事を開発することは、高齢社会にとって最大と言ってよ
いほどの急務だと思う。たとえば、区役所出張所の窓口などに座って、その人
に聞けば区域内のことが何でもピタリとわかる老職員、という人だっていても
よいと思う。昔から各職場に「生き字引」と呼ばれるベテランがいたものだ
が、こういう人たちを大切に活かし、後続部隊を育てるべきではないか。
誰かが「老人は地域社会のコーディネイター」と言っていたが、とくに地域に
密着した仕事には活用の場が多いと思う。現代はいやおうなく移動社会であ
る。新しい住人たちが、その地域になじみ、その地域に早く根を下ろせるよう
に、人と人とのつなぎ目の役割を果たす仕事は、これからの老人の適職の一つ
ではないだろうか。とにかくいろんな工夫で、老人の職場を確保拡大すること
だ。
それは老人にとっての経済的、精神的自立を保障するだけではない。仕事を持
つということは必然的に、若い世代との結びつきができる。どこかの役割を分
担し合いながら一つの仕事が流れている。老人と若い世代は、ともかく一つの
土俵の上に乗っている仕事仲間である。
現代の老人たちが求めているのも、単なるいたわりではなく、老若の差はあっ
ても、共にこの世を生きる仲間としての扱いではないか。

長谷川町子「いじわるばあさん」
この漫画の主人公の女性は決して「楢山節考」のおりんにみられるような、自
然そのもののごとき無私の存在ではない。
娑婆っ気たっぷり、そうご注文通り枯れ果ててたまるかよ、とばかり、ことご
とに「意地悪」という名の自己主張を続ける。
といっても、意地悪ばあさんは、決して強気一方の老人ではない。おそらく、
老いを自覚することもっともたしかなリアリストであり、また、老いのさびし
にも人一倍敏感な人だ。ただ、彼女は、意地悪で固めた強気の姿勢をとり続
け、周囲の人には憎まれっぱなしだが、その憎しみを堂々とわが身に受けて耐
えている。意地悪の責任をとっている。このあたり、著者が意地悪ばあさんを
高く評価するところである。
老いにも甘えず、自らの行為の対価は自ら支払って、決して人のせいにしな
い。ないものねだりをしない。まことにかっきりした姿である。

中・高年の婦人の集まりなどで「どんな老人になりたいか」と質問すると、最
も多く返ってくる答えが「かわいいおばあちゃんになりたい」だ。「みんなに
愛されるおばあちゃん」だ。
愛されたい思いは熱烈だが、一人一人は結構自己主張が強く、意地悪ばあさん
の要素を十分にもっている。扱いにくいのは、むしろこうして老女になった人
たちだろう。実態はかなり小憎らしく、どうみても扱いやすいという意味での
「かわいいおばあちゃん」という代物ではないくせに、自分はその資格条件を
満たしたつもりで、ないものねだりをする老女たち。


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