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[No.16460] 大堀昭二:慰謝料法廷 男女のトラブルファイル 投稿者:男爵  投稿日:2011/01/26(Wed) 06:24
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大堀昭二:慰謝料法廷 男女のトラブルファイル

ある弁護士の慰謝料法廷の話。
最初は高校の同級生との飲み会で、(自分の仕事を理解してほしいから)さしつかえのないところをポツリポリツと語っていたところ、面白いから本にしたらと言われ、出版社の方からも積極的な申し出があったからとのこと。

男の背信、老女将五十年後の孤独
 料理店で成功した女性には長年連れ添った男性がいた。その男が亡くなると、男には妻子がいたことがわかり、この女性にはなんの財産も残されていないうえ、現在住んでいるところから出て行ってほしいと妻子側から求められたという。
 北陸から出てきた彼女は神田の料亭で働くようになる。近くの古着屋の男が客としてきて、親しくなりやがて同棲する。この男の隣に小さな一杯飲み屋を開き彼女は売り上げを大いに上げた。これを見て男は古着屋の権利を弟にゆずり、弟は上野で古着屋をはじめ、彼女と男は古着屋をこわしておでん屋を始めた。店は繁盛して、彼女は妹たちを呼びみんなで店を大きくした。商売が大きくなると金まわりもよくなり、男は店の女に手を出すようになる。彼女は儲けたお金で、通っていた長唄の師匠の家を買い取った。売買や投機などの手続きは男に任せていた。料理屋を繁盛させたのは彼女の努力によるところが大きく、それを仕事をせず遊んでいた男の名義にしたのは、フェアではないのだが、彼女は昔気質の女で、内縁でも彼を夫と思っていたから、彼女は承知したのだった。
 そろそろ結婚届けを出そうという彼女の提案に、男は「子どもができてからでも遅くはない」と入籍を避けた。そのうち男と若い従業員との仲が職場でも噂となり現場を見つけられた男は二度としないと土下座して謝り女は逃げ去った。
 月日は流れ、男は突然入院して三週間後にがんで亡くなった。その時、義弟から、実は男には妻子があったと聞かされる。
 義弟も義母も、ずっと彼女を内運の妻として交際していた。妻子がいたとは最後になってわかったことだった。あの若い女の従業員が娘を産んだ時に密かに婚姻届を出したのだ。今になると入院した夫が実印を持って病院に来るようにと言ったことがあったのは、彼女に財産を相続しようとしたのかもしれないと気がついたが、そのときは妻子がいることがわかって逆上した彼女は病院に行かなかった。
 法的には、彼女にはまったく権利がないのだが、裁判所も実情を知ると、彼女が遺産相続されなかったのは気の毒と考えたのか、彼女にいくらでも遺産をわけるよう和解調停をすすめた。

やっと遺産相続も終わり落ち着いた女は、この弁護士に奥の仏壇を見せながら
「自分に立ち退きを迫った娘も夫のたった一人の子どもだから憎いとは思わない。悪いのはみんなあの男です。このクソジジイめ」と笑いながら言ったという。

外科医とその妻の調停離婚
 ある病院の外科部長とそこの看護婦の不倫が発端となった、離婚と慰謝料をめぐる争い。
 その外科部長は独立して開業し、不倫相手の看護婦を自分の病院に引き抜いていった。一言の挨拶もなく優秀な看護婦を引き抜いたことは病院側にとり許せなく、外科部長の妻にも同情した病院長から、この弁護士に依頼があった。
 慰謝料や子どもの親権や養育寮のことで折り合いがつかなかったが、有名私立高校に合格した長男が入学金や授業料のことで父親に何度か頼みに行くうち、父親と看護婦との間に生まれた女の子を実の妹のようにかわいがるのを見た父親が、長男の進学の援助をすることを合意した上、妻に譲歩してなんとか合意離婚に達した。
 父のように医者になりたいという長男の支援をすることに、この外科医師も内心納得し離婚に協力したのが真相らしい。

財産分与・慰謝料五億円の裁判バトル
 夫は全共闘世代の一人、紛争に明け暮れる私大を中退して都内のホテルに勤務、妻も短大卒で同じホテルに勤め、職場結婚した。しばらくして、二人はホテルをやめ、妻の父の経営する埼玉県の食品会社で働くことにする。そこで夫はよく働き業績をあげて義父の信用も高まる。義理父の死後、夫は社長となり、義妹夫妻も会社経営に加わり同族会社として経営は順調であった。
 妻も経理や庶務の仕事をする傍ら子育てにも全力で取り組んだ。長女の後に長男も生まれた。そのあたりで夫の浮気が発覚し、夫は全面的にわびた。やがてバブル時代となり夫は不動産にも手を出すがバブル不況で業績が思わしくなくなる。しかし、夫には運がついてまわるのか、そのころ取引先からコンピュータソフト会社から経営移譲の話がもちあがった。この会社は近い将来株式の上場も可能ということであった。妻は消極的な夫を説得して、ソフト会社獲得のための資金準備にも走り回った。
 こうして順調な会社経営が余裕をうみ、夫は新たな浮気へと走った。せめて長男が大学を卒業するまでと考えていた妻も、とうとう我慢できず離婚の訴訟をはじめた。なんと五億円の慰謝料、しかし会社が上場をひかえた夫はやむなく同意したのだった。

いろんな離婚と慰謝料のケースが紹介されているが、たいていは夫の浮気が原因。