悠々世代 
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[No.706] 一人を楽しむ 投稿者:タンマ  投稿日:2008/11/28(Fri) 15:09
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と言っても、女房が死んだわけではなく
ちゃんと生きている。
別に悪い女房ではない。
男は会社と家庭で、それぞれの顔を、持っているが
その表情は急には変えられない。
そこで、家庭用の顔に復元するための場が必要となるわけである。

それが、赤ちょうちんの酒場である。
一人が良い。
会社仲間だと、会社の顔を崩せない。
雑誌とか、新聞なんか読みながら飲んでもいけない。
それでは、何の意味も無い。
店の人とか、回りの客とかにも干渉されずに
じっとしているのが良いのです。
出来れば白い壁を見つめながらが、GOOD。
杯を重ねるうちに、いつしか酔いで高揚しつつある気持ちが
その、白い壁に、もう一人の、おのれの姿を投射する。
そして、投射された自分との会話が始まるのである。
「アンタもいい加減だねえ」
「そういうお前だって、でたらめだよ」
「そうかなあ、結構一生懸命なんだけどなあ」
「でも可愛いさ」
「健気だよね」
「この世のことは、夢のまた夢」
な〜んて、訳のわからぬ会話。

「お客さん、ちょっと席を動いてもらっても良いですか?」
ふと、我に戻る。
「あ、いや、もう帰るよ・・お勘定!」
と言って外に出る。
チラッとイルミネーションを仰ぎ見る。
家へ帰る表情の準備が出来上がるのである。

でも、もう一月ほどで、その、楽しい作業もなくなってしまう。
家だけの顔になるのです。


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