バスに乗った。ある停留所へ着くかなと思った瞬間、「バーン、ビジビジ」となんとも異様なものすごい音がした。一瞬身をすくめ、「恐いっ」と声を出していた。他の乗客も一様に顔を見合わせている。 運転手は脇の箱から鉄棒のようなものを取り出し、 「今の音がなんだったか調べてきます」 と降りて行った。 外を見ると、小さい子どもを連れた母親が見えた。運転手は母親に、 「大丈夫ですか」 と言っていた。何事もなかったらしく親子は去った。 運転手はうしろへ歩いて行き、なにやらやっていたが戻ってきて席に着くと、乗客に聞こえないように小さな声で営業所へなにやら伝えていた。そのあと、 「うしろのタイヤが片方パンクしました。2つあるので、そのまま安全通行で参ります」 と放送した。結果がわかってほっとしたが、そのあとなぜか車体が変に揺れるような気がした。いつも通る道だし、こんな揺れ方をしたことがない。タイヤの片方がパンクしたので、不安定になっているのかなんて思ってしまった。 それにしてもすごい音だった。止まっているときだったからまだよかった。走っているときだったら、どんな思いがしただろうか。 命が縮むとはこういうことだろうと思った。
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