バス停でおじちゃまが、そばの人になにやら聞いていた。 それが耳に入ったので、私は乗り場を教えてあげた。その人は礼を言って移った。 そこにいたおじちゃまは、「あの人は何を言っているんだかわからないんだよ」 と私にこぼした。少し話を聞いてあげたが、隣の停留所に家へ帰るバスが来た。 違うバスで買い物に行こうとしたが止めて、そのバスへ急いだ。
そこにはさっきのおじちゃまがいた。掴まってしまった。 「さっきはありがとう。バス停にいた人は聞いてもわけがわからないんだよ。あなたは さっと簡潔に教えてくれたな」と言う。 どっちもどっちのおじちゃまのような気がする。私より年上かどうかわからないが、 人と会話が通じなくなったらどうしようと思った。
バスに乗り込んでも話は続いた。このおじちゃまも、私と同じ停留所までと言うので 乗り換えの停留所で降りた。やがてやってきたバスに乗り込もうとするおじちゃま。 私は慌てた。「このバスに乗ってはだめですよ。行き先が違います」 「ひやっー よかった。どこへ行っちゃうかわからなかった」 と喜んでくれた。
「大型の免許も持っている、青森で生まれたけど寒いので鹿児島の会社に入ったん だー。でも、方向音痴でさ」には参った。
私としたら「教えてくれたから乗ったのに」と恨まれたらつまらない、と思ったのです。
今月、今夜で終わる「私の最後のひやっと事故」でした。
|