画像サイズ: 397×530 (90kB) | 以下、チョット旧聞に属するかも知れないが、ここへ収めることにした。
絵が好きで、カイガイへ行くチャンスがあれば、誰だって訪問先のひとつに美術館を加えようと思うのは、ごく当たり前のことではないだろうか。いつもわたしは、そんなことを考えてしまうが、今年はあいにくと、行き先がヨーロッパ・アルプスになってしまった。山中にはまず、美術館はすくないので、いささか諦めムードになっていたが、待てよ、ドイツのミュンヘンが起点だったな、ならアルテ・ピナコテークはどうだ。ここに寄ってみようと思いたった。
ミュンヘンへ泊まったのは、旅行も終わりのころで、投宿先のホテルからは、トラムで行くことにした。何しろミュンヘンは初めてなので、西も東も分からない。これがすぐ見つからないと、後のスケジュールにも影響すると思い、すこし早めにホテルを出た。
ところが、意外とすいすい行ってしまったので、絵画館に着いた時は、まだ開館のすこし前だった。日本だと、早すぎて館内には入れなくても、屋外に待たされるようなことはないように思うが、さすがドイツだ。開館時間が来るまでは、表のドアはゼッタイに開けない。付近に手ごろなベンチなども見当たらないので、仕方なく玄関前の石段に腰を下ろして、ドアの開くのを待つ。
以前なにかで読んだのだが、この絵画館は、館内の改装中で、それが何年もかかっているが、未だに工事は終わっていないという。なるほど、添付写真に見る通りである。
やがて時間が来て、やっと入場できた。館内は大々的に修復中で、館蔵品の三分の一くらいしか見られないと云う割には、旅の疲れのせいか、かなり見ごたえがあったような気がする。
各部屋には一人か二人、監視員がいた、日本では監視員には女のひとが多く、たいてい部屋の隅の椅子に掛けているが、ここでは男女の両方がいた。日本とちがって、椅子などはなく、みな立ったままだ。ただ図体が大きいので、かなり遠くまで見通しは利く。
展示してある絵は、一般にみな大きいので、それを展示する部屋も、いきおい相当に大きくなる。また小さい絵は、脇の廊下のようなところに展示してあった。
たしかネットで読んだと思うが、中の絵は工事の完了するまでは、撮り放題とあったような気がしたので、何の気兼ねもなくバンバン撮っていると、さっそく少し離れたところにいた連れが、目を付けられた。フラッシュの発火に、その部屋の監視員が目ざとく気づいたらしい。なにか注意を受けていたらしいが、ハッキリ返事をしなかったのか、次の部屋へ移動しても、まだ付いてきた。
ここでは、あとで分かったのだが、フラッシュを焚かなければ撮影はオッケーらしいが、よく他の美術館で見かける、あのカメラのXマークのようなものはひとつも見かけなかった。
一緒に入館した私も、これでは落ち着いて鑑賞できないので、いい加減見たところで退館することに決め、階下へ降りた。そこにはミュージアムショップもあったが、絵葉書のほかにはあまり珍しいものも見当たらなかったような気がする。
私の好きな画家は、ここではやはりルーベンスで、「レウキッポスの娘たちの略奪」など、色彩も華麗で、構成もドラマチックな、巨匠の名に恥じない大作を心行くまで鑑賞した。また、日ごろ尊敬する『北のフィレンツェ』の大画家、デューラーの「4人の使徒」も見ることが出来、じつにハッピーだった。
今まで色々な美術館へ行ったが、ここで、じつにフシギナ光景をみた。それはある大きな絵の前に、大の大人ばかりが6,7人並んで、記念撮影をしていたのである。館の前で写しているのは、見た覚えもあるが、絵の前とは。世の中には色々な人がいるもんだとつくづく感心した。 (おわり) |