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[No.7963] 大つごもり 投稿者:男爵   投稿日:2017/11/17(Fri) 13:50
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樋口一葉の「大つごもり」を読む。

以前に、中学生か高校生の時に
家にあった古い文学全集で読んだ記憶がある。

ヒロインが伯父叔母のピンチ(高利貸しに払う利子が払えず)を救うため
奉公人なので女将さん(小説では、ご新造)に借金の前借りをするのだが
以前には分かったと言っていたのに
(ヒロインには関係のないささいなことで)機嫌を悪くした女将さんは、今になってうんと言わない。

困り果てたヒロインは
伯父夫婦の息子が来た時、みんな居ないので
とっさに二十枚の札束から二枚だけ抜き取り
その息子に渡してしまう。

女将さんが今夜は大つごもり(大晦日)
さて今年の集計はと確認しそうになり
ヒロインは観念する。
見つかったら死んでしまおう。

ところが
引き出しを開けたら
その家の道楽息子が「お金はすっかりいただきました」と
書き付けを入れていた。

昔読んだ時は、やれやれ(可愛そうな)ヒロインは助かったと思ったのだが
改めて読んでみると
この道楽息子は、ヒロインが二枚抜き取ったことは知っていたかもしれない。

知っていて、わざと自分が全部いただいたのだと書き置きして
ヒロインを救ったのかもしれない。  確信犯

継母からも実父からも愛想をつかされている道楽息子だが
それなりのお金の使い方など知っていたのかもしれない。
この大金持ちの一家はたくさんの長屋持ちで
道楽息子はその店子たちの貧乏人に大晦日に大盤振る舞いするというのだ。

自分を白い目で見る実父、継母、妹たち
それなら自分は好きなことをするよという道楽息子も
店子たちのためにサービスするのは、太っ腹のいいところを見せたい見栄なのかもしれない。

宮沢賢治や有島武郎なら
もっとスマートにしたところ。

宮沢賢治は自分の家が質屋で、貧乏人からお金を搾り取っていたような後ろめたさがあったから
自分の家の稼業を嗣ぐ気になれず
自分の将来も、出世とか世間一般の成功という野心はなかったように思われる。

有島武郎は父の残した農場を解放した。

明治時代の樋口一葉だから
社会主義に目覚めたわけでもなかろう。

貧しい人がたくさんいる一方で、金持ちはますますお金を欲しがるという不公平さ
それなら、金持ちも少しは困っている人たちのためにお金を出してあげたらいいと思っていたのでしょう。

一葉も貧乏人で困っていた。
貧乏人の辛い気持ちは知っていた。

一葉はしだいに文才が認められ、さあこれからというときに死んでしまったのは残念。


     ♪   ♪


「大つごもり」と書くところを「大つもごり」と書いてしまった例があります。

>先日、樋口一葉記念館に行きました。2階の展示室に、作品の解説コーナーがあり、
>「大つごもり」の作品コーナーに、当時掲載された雑誌「文学界」がおいてありました。
>眼を凝らしてみると、なんとそこには、「大つもごり」とありました。
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/7810391.html

かつて、地方によっては「大つもごり」と書いていたのかもしれません。


[No.7964] にごりえ 投稿者:男爵   投稿日:2017/11/18(Sat) 07:52
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樋口一葉の「にごりえ」を読む。

売れっ子酌婦のお力は同僚の女たちもうらやむ客あつかいのうまい女
天性の女としての魅力で、男たちが彼女の回りに集まってくる。

しかし
彼女を目当てに来た客の源七には会おうとしない。

源七はお力にいれあげたあげく落ちぶれ、妻子を泣かせている。
そんなことを知っているお力は源七を避けていたのだ。

源七の妻お初は一人息子の幼い太吉に、あいつは鬼女だと言って聞かせる。

そんなおり
太吉はお力とその客にさそわれ、お菓子屋でお菓子をいっぱい買ってもらう。

嬉しくてお菓子の包みを抱えて家に帰ってきた太吉は、母親にあの鬼姉さんがくれたのと
報告するが
それを聞いた母親は血相を変えて、そんなもの棄てなさいと叱る。

親子の叫び声を聞いていた源七はなにも小さい子どもにそんなことをしなくてもよいではないか
あの女だって子どもが可愛そうだと思ってしたことだと夫婦喧嘩となり
ついに男は妻に離縁するから出て行けと言う。

後に残された子どもが不憫だから、どうか離縁しないようにと頼むが
もはや毎日のように妻との争いが繰り返され嫌気がさした源七は、お初ときっぱり別れてしまう。


現代でもありそうな男女関係
男も女も上手に世渡りすれば、なんとか日常生活の破壊にはいたらず
無事時間が過ぎていくということもあるのかもしれないが....

主人公たちはみな真面目にその日その日をおくっていた。
だから自分の感情に素直で、その結果とうとう最後に不幸な結果を迎える。

救いは、お力は源七の一家を不幸にしようとして客あしらいをしたのではなく
店で源七のよき相手になって対応していたつもりが、源七がのめりこんでしまったこと。
そんな、源七のことを考えて配慮もしていたお力の誠意を私は感じるのだが。


作者の一葉は、終焉の地の丸山福町の付近にある酩酒屋の女たちを見ながら
この作品を書いたという。

終焉の地の丸山福町は文京区にあります。


[No.7965] 蛇足 投稿者:男爵   投稿日:2017/11/18(Sat) 09:37
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> 樋口一葉の「にごりえ」を読む。

> 作者の一葉は、終焉の地の丸山福町の付近にある酩酒屋の女たちを見ながら
> この作品を書いたという。


あの
三善英史「円山・花町・母の町」
こちらは渋谷の町でした。
https://www.youtube.com/watch?v=DrfqEy2Fuak


[No.7966] 十三夜 投稿者:男爵  投稿日:2017/11/19(Sun) 09:39
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> 樋口一葉の「大つごもり」を読む。

さて、気がつれた方もいらっしゃるでしょうが
メロウ談話室で話題になった「十三夜」がきっかけで
樋口一葉の作品を読んでみたのでした。


「十三夜」のヒロインの運命や登場人物とのかかわりあいには
あまり関係ない話題ですが
十三夜と十五夜について、ネットで調べて見ました。

 十五夜  旧暦8月15日  中秋の名月

  十三夜  旧暦9月13日  中秋の名月の次に美しい月(しかし、満月ではない)

   片方だけ見るのは縁起が悪い
   見るなら両方見る あるいはどちらも見ない
   これは江戸時代の習慣だった。

 あと
   十日夜(とうかんや)  旧暦10月10日  農作物に感謝する日
  もあります。


すでに
樋口一葉の頃から、十三夜の月見の習慣はなくなっていたらしい。

 十三夜のヒロイン 冷たい夫だが、おかげで弟の就職は順調 新しい知識階級(十五夜の月も十三夜の月も見ないらしい。母親が弟に団子を姉に届けさせようとすると、弟は片方だけになるから縁起が悪いと答える)
  そして
 ヒロインの実家は古い習慣を守る庶民階級(十三夜の月を見る、団子も飾る。当然十五夜の月も見る)

明治になって  太陰暦→太陽暦

お正月も太陽暦で迎える我々は、太陰暦で書かれた当時の和歌や日記は鑑賞しずらい。




[No.7967] Re: 十三夜 投稿者:yuki  投稿日:2017/11/19(Sun) 16:13
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男爵さん皆さんこんにちは、yukiです。

>  十五夜  旧暦8月15日  中秋の名月
>
>   十三夜  旧暦9月13日  中秋の名月の次に美しい月(しかし、満月ではない)

こう書かれるのでしたら、ちょっと一言。
「中秋の名月」も、一般的には満月ではありません。
何年かに一度という頻度だったと思います。

旧暦8月15日の月を、中秋の名月と言うそうです。
ですから上記の通り、満月は、別の日になる様です。