樋口一葉の「にごりえ」を読む。
売れっ子酌婦のお力は同僚の女たちもうらやむ客あつかいのうまい女 天性の女としての魅力で、男たちが彼女の回りに集まってくる。
しかし 彼女を目当てに来た客の源七には会おうとしない。
源七はお力にいれあげたあげく落ちぶれ、妻子を泣かせている。 そんなことを知っているお力は源七を避けていたのだ。
源七の妻お初は一人息子の幼い太吉に、あいつは鬼女だと言って聞かせる。
そんなおり 太吉はお力とその客にさそわれ、お菓子屋でお菓子をいっぱい買ってもらう。
嬉しくてお菓子の包みを抱えて家に帰ってきた太吉は、母親にあの鬼姉さんがくれたのと 報告するが それを聞いた母親は血相を変えて、そんなもの棄てなさいと叱る。
親子の叫び声を聞いていた源七はなにも小さい子どもにそんなことをしなくてもよいではないか あの女だって子どもが可愛そうだと思ってしたことだと夫婦喧嘩となり ついに男は妻に離縁するから出て行けと言う。
後に残された子どもが不憫だから、どうか離縁しないようにと頼むが もはや毎日のように妻との争いが繰り返され嫌気がさした源七は、お初ときっぱり別れてしまう。
現代でもありそうな男女関係 男も女も上手に世渡りすれば、なんとか日常生活の破壊にはいたらず 無事時間が過ぎていくということもあるのかもしれないが....
主人公たちはみな真面目にその日その日をおくっていた。 だから自分の感情に素直で、その結果とうとう最後に不幸な結果を迎える。
救いは、お力は源七の一家を不幸にしようとして客あしらいをしたのではなく 店で源七のよき相手になって対応していたつもりが、源七がのめりこんでしまったこと。 そんな、源七のことを考えて配慮もしていたお力の誠意を私は感じるのだが。
作者の一葉は、終焉の地の丸山福町の付近にある酩酒屋の女たちを見ながら この作品を書いたという。
終焉の地の丸山福町は文京区にあります。
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