歌舞伎には、だんまりの場がよくある。 だんまりとは、暗闇(くらやみ)で、お互いに探り合いながら 死闘を繰り広げたり、物品を奪い合ったりする 立ち回りの事だ。 その時に地唄の唄の「露は尾花」が多い。 唄は実に色っぽい・・・ 露は尾花と寝たと言う 尾花は露と寝ぬと・・・♪ 蝶は菜種と寝たと言う 菜種は蝶と寝ぬと・・・♪ 月は清水と寝たと言う 清水は月と寝ぬと・・・♪ 舞う時は、しっとりと舞わねばならない。 しかしこの曲が修羅場の立ち回りに用いるのかがとても不思議! 修羅場だからこそ、このしっとりした曲が良いのかも・・・
先日の鴈治郎襲名の公演で「封印切」を見た。 これは「梅川忠兵衛・冥土の飛脚」の二段目だ。 嫌われ者の八右衛門の挑発に我慢できず、ついに店の公金の 封を切ってしまった! 即刻死罪!!! 梅川を身請けし、落合う場所に急ぎ行く。 花道で死を覚悟し心の葛藤の場面、聞き覚えのある曲! 地唄の「ぐち」だった! ぐちじゃなけれど、これまあきかしゃんせ・・・・・・・♪ たまに逢う夜の楽しければ・・・・・・♪ 逢えてうれしさ 別れのつらさ・・・・・・♪ 舞うには、心の奥深さを現さねばならない。
山村楽正(85歳で他界)の「ぐち」を見たとき、愕然とした。 まぁ〜なんと! 品良くしっとりと毅然とした姿に感激した。
地唄舞・・・誰もが思い浮かぶのは「武原はん師」(95歳で他界) 武原はんと言えば「雪」 90歳過ぎても国立劇場で「雪」を舞っていた。
地唄舞を日本舞踊のように踊ってしまう人もいる。 同じ踊りでも「地唄舞」と「日本舞踊」とは違うのだ。
地唄舞は年を重ねれば重ねただけ、曲・唄の奥深さが分かり、 はんなりとした柔らかさ、品位と優美さがあり、変幻自在な舞だ。
地唄舞の奥深さを理解出来るようになった。
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