> 死にかけた日本語―私設・マスコミ校閲部 (1976年)
余波をかって 「言論人」(51.1.15)を読んでいたら 「...の余波をかって...」とあったので はじめ「余波をかぶって」の誤植かと思ったが、それでは意味が通じない。 どうやら「余勢を駆って」(勢いに乗って)の間違いらしい。
鍛治屋 「荷風全集」(岩波書店)第22巻258ページに 「大谷といふは本所三目辺の鍛治屋の倅なる由」とあるが 鍛治屋は「鍛冶屋」でなくてはならない。 これは荷風の書き損じである。
興味深々 「ゲーテ全集」(人文書院)第3巻196ページに 「そういうお話を承ることは興味深々たるものがあります」 とあるが、興味津々と書くべきである。 興味が次々とわいてきてつきないさまのこと。 興味深々と書かれているのを時々見かけるのは、「興味深い...」 の「深い」につられるからだろうか。 これは遠藤周作のテレビでのコメントで有名。
若冠二十歳 「自由世界」(50.5)68ページに 「1932年若冠二十歳で入党したが....」とあるが 若冠は弱冠と書くべきであろう。
日本語は難しい。 外国人でなくても、日本人でも間違える。
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