日本で一番長い小説 大菩薩峠 作者の中里介山は羽村の人。 玉川上水の遺跡を訪れたときこの作者のことを改めて知った。
長編時代小説とはいえ、主人公の、虚無にとりつかれた剣士・机竜之助をめぐる 多くの人間たちを描いているので、いくらでも書ける。 作者は死んでしまったから未完になったが、生きて書き続けたらまだまだ続いたであろう。
舞台は甲州大菩薩峠から始まって日本全国の旅となっている。 話は幕末から明治に変わる時代のため、新撰組が出てくるのは驚きだった。 京都も出てくるし、宮城県も舞台になる。
意外にも 菊池寛、谷崎潤一郎、泉鏡花、芥川龍之介らが賞賛し、いわゆるプロ受けもあったのである。 若いとき左翼運動に傾いたことのある作者に対して 文筆家たちの内心の同情があったのかもしれない。
盲目となった竜之助は、一緒に暮らす若い娘を守りながら 夜毎に辻斬りをするというわけのわからない行動をとる。 (森鴎外のヰタ・セクスアリスでも、主人公と一緒に寮生活をおくる男が、主人公には何もしないのに、夜に外出して他人に乱暴を働く話を連想する)
この小説に出てくる白骨温泉は今も有名である。
ニヒルな主人公の机竜之助は、丹下左膳のモデルとなったのだろう。 ほかにも机竜之助の末裔と思われるのが眠狂四郎や木枯し紋次郎であり、このメロウ倶楽部には名前の似ている唐辛子紋次郎さんがいる。(失礼しました)
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