[No.410]
ダス・ゲマイネ
投稿者:男爵
投稿日:2011/12/04(Sun) 08:45
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高校生の時、(読むと自殺したくなるから)決して読むなと言われた太宰治の小説。
それをまにうけて、私は大学に入ってから読んだのです。
世の中に太宰ファンは多い。
さて、太宰治のダス・ゲマイネについて印象を書いてみよう。
次の言葉を読んでなるほどと思った。
自称音楽学校(今の東京芸大)の学生が東大生の主人公に語る言葉である。
「僕はそこの音楽学校にかれこれ8年います。なかなか卒業できない。
まだいちども試験というものに出席しないからだ。ひとがひとの
能力を試みるなんてことは、君、容易ならぬ無礼だからね」
「さうです」「と言ってみただけのことさ。つまりは頭がわるいのだよ」
人が人を評価するとは、とうてい完全なことは期待できない。
ある面では人気投票、あるいはひいきの引き倒しにもなりかねない。
しかしながら、その価値がわからない人には引き立ててもらえない。
その価値をわかる人はやはり同じ分野の人でないとだめなのだ。
美術にしても学術研究にしても、先生に負の評価を受けたら
抹殺されることもある。いや、過去にもあったのではないか。
だから、相当の力をつけてから、たいていの人は先生から独立して
先生を客観的に評価するようになる。
ダス・ゲマイネとはドイツ語 das Gemeine
これは英語にもフランス語ある形式で、形容詞が名詞をさす。
定冠詞+形容詞で「ゲマインな人」ということ。
つまり「フツーの人」「凡人」「低俗なやつ」「いやらしいやつ」
この小説では誰が低俗な人間なのであろうか。
主人公かあるいは全員か。