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[No.725] 人類学を神話からDNA科学へ 投稿者:GRUE  投稿日:2011/12/23(Fri) 10:54
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皆さん、おはようございます。

これは、「ミトコンドリア・イブ」のツリーからの分岐の話題です。

「新日本人の起源」(崎谷 満 勉誠出版 2009年9月)を読んでの
感想です。

まず、これには副題が付いています。「神話からDNA科学へ」と。
「日本人の起源」のような人類学に関する話が、「分子生物学」とい
う科学的ツールを得て、具体的にはDNA科学分析方法を用いた結果、
旧来の思考(骨や歯の分析に頼る形質人類学の結果)がもはや神話と
して乗り越えられてしまう事態になっているということでしょう。
DNA分析による分子人類学の確立です。

思い起こせば、植物・動物学において、1953年のワトソン・クリック
のDNA(遺伝子)の二重螺旋構造の提唱と以後の発展が、形態学と
しての植物・動物學から、真の意味での科学へと転換していったこと
をまざまざと思い出させます。

この流れが、人類学にもいよいよ本格的に適用の段階に入ったことだ
と思います。前世紀の終わりに、母性系ミトコンドリアDNA分析が
進み、ミトコンドリア・イブがアフリカに居たことを示し、まもなく
父性系のY染色体分析がY染色体アダムが、同じくアフリカに居たこ
とを示した。

この種が、約6万5千年前に、アラビア半島(当時アフリカと陸続き)
を経て出アフリカを果たし、すぐに、北ルート、西ルート、南ルート
の3方向に向かって全世界に拡散して行き、現世人類の全てが、この
アフリカ発のイブとアダムの単一種の子孫であることがDNA解析に
よって証明された。「人類は皆兄弟」というのが言葉だけのものでは
ない訳だなと思っています。肌色の違いなど、全く表面的なもので、
その優劣など(自国の民族だけが優性とか言った指導者も過去にいま
したが)、今や考えるだけ無駄ということが証明されてきている。

日本列島には、この北ルートを経て到達したと。3つのルートの中で
北ルートが、DNAが変異をしながら、もっとも多様な経路を経て、
列島に伝わってきた。(この情報が、DNA(遺伝子)の塩基の配列
の違いとして繰り込まれている訳でしょう。)

日本人には、大変多くのDNAタイプが残っていて、D2,C1など
は日本人にしか残っていないものもある。日本列島のヒトの包容力の
大きさ(殺したり追い出したりしなかった)を示すものと著者は書い
ています。列島が、東の果ての島国で、これ以上余所へ行けないこと
もあったのではないかと私は思いますが。

分子生物學、考古学、言語学の統合によって、更に緻密な分析が進んで
おり、これは、21世紀の科学の典型の一つとなるかもしれないと思っ
ています。一度読んで損はない本でしょう。もちろん、この本に限る訳
ではありませんが。


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