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[No.211] 石巻市立湊小学校避難所 投稿者:男爵  投稿日:2013/06/27(Thu) 08:06
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藤川佳三:石巻市立湊小学校避難所

「石巻市立湊小学校避難所」はドキュメンタリー映画
この本は編集フィルムに出てこなかった
忘れられない細々したできごとを綴ったもの。

著者は映画監督である。
知人に連れられ石巻に入る。
そこで見たのは元気な地域の人たちだった。
しかし、だんだん慣れてわかってくると
大震災で身も心も打撃を受けた人々は
悲しんでばかりいられないから、空元気でも
陽気に振る舞おうとしていたことがわかる。

そういう努力も、まわりを明るくさせ、自分の未来も
希望がもてるようになるから。

この本には、暗いことは書いていない。
本当は悲しいことなのだが、それを語る人々や
記録する著者の姿勢に、不満とか絶望とかがない。

そのためか
読んでいても明るくなる。
被災地のことを書いた本で、こんなに楽しく読める本は珍しい。

避難所の物資班の班長はなりたてのAさんだった。
Aさんは震災前に浜岡原発で働いていて、休暇で石巻に戻って
三日目に震災に遭った。

ビルに逃れた後、助けられた。
避難所にいるうちに前任者のあととして物資班班長になるよう頼まれた。

班長になった次の日から、物資がこなくなった。
前任者の時はあまるくらい配達があったのに。
これは自分が代わったからかと内心心配になってきた。

実は避難所にどんどん人が増えて、2000人の人が食べ物をとりに
小学校に来ていたのが、最終的には3000人がくるようになった。
この人たちが全員小学校に避難しているのではなく
自宅からあるいは他の避難所から、配給の時に集まってくるのだ。

そのときの食料は水とお菓子しかなかった。
班長になって2日くらいで食料がなくなってしまった。
明日もし食料が来なかったらどうしようと思うと心配で眠れなかった。

夜中に取材が来た。
電気がないから、スポットライトに照らされてカメラが回っていた。
レポーターの人から質問されるが、Aさんは完全にふてくされていた。

「電気はどうですか?」
「見りゃわかるだろう、まっ暗なんだからさあ」
「ガスは?」
「ガスだってねえよ。カセットコンロでお湯あっためてるんだからさ」
「水は?」
「水だってねえよ。ベットボトルの水しかねえよ。風呂だって二週間くらい入ってねえし、歯だって磨いてないんだからな」
 思い出したら腹が立ってきたな。ほんと他人事みたいに言いやがってよ。

「食べ物どうですか?」
「ご飯がないんです。明日のご飯がないんです」
「なんでこれだけ食べ物や飲み物がないんですか?」
「一番頼りにしてた自衛隊と行政っていうの? 国や市が何もしてくれないんだからさ。それがこのありさまだよ。ここに何人いると思ってんだよ。3000人だぞ。俺だって好きで3000人まかなってんじゃないよ」
「学校の中だけだったら何とかなったかもしれないけど、外もって言ったら、それだけで三倍は必要になるんだぞ」
「市役所の人もさあ、紙切れとボールペンだけ持ってきて『ここ何人ですか』って聞いて、それでさよならかよ。カロリーメイトの一つでも持ってきてくれよ」

次の日の朝か、その次の日の朝か
あーあ、死なないといけねえなとか思ったよ。
なんて言って詫びようみたいな気持ちになって。

そしたらさ、そんときにね
配給ってたしか9時からだったかな。
その前にね、来たんだよ配給が。
だから、こりゃいいやっと思って
自分で拡声器もって、みんなに搬入手伝ってもらったんだよ。
浮かれてたんだよ。やっと食いもんが来たよって。

で、一緒に運びながら、これで本日は腹一杯食べられますよって。
すごいな。まだ終わらないよ。食い切れないな。
あはは。まだ来るの。もういいよ。まだ来るよ。ま〜だ〜。 もういいよ。

何でこんなに来るんだってくらい来ました。
中身はおにぎり、パン、お菓子、水、缶詰
大急ぎで集計して、このときは多分おにぎり二個、パン一個、水ペットボトル500ミリリットル二人で一本だったと思う。

朝の配給が終わったと思ったらまた物資の搬入。
その日に来たのはトラック計7台。音楽室がパンパンになった。
テレビの力って、スゲ〜。正直こんなに早く反響が来るなんて思っていなかった。

人ってまだまだ捨てたもんじゃない。
見ている人はいるんだって実感した。
俺たちの頑張りは無駄じゃない。やってて良かった。
これで、皆に腹一杯のご飯を渡せるぞって思った。

その日は、本部物資班班長の俺にとっては、ミラクルな日になった。


[No.217] Re: 石巻市立湊小学校避難所 投稿者:男爵  投稿日:2013/06/29(Sat) 09:00
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> 藤川佳三:石巻市立湊小学校避難所
>
> 「石巻市立湊小学校避難所」はドキュメンタリー映画
> この本は編集フィルムに出てこなかった
> 忘れられない細々したできごとを綴ったもの。
>
> 著者は映画監督である。

マスコミを連れてやってくる政治家、芸能人

午前中の作業を終えて湊小学校に戻った。
すると、二台のバスが校庭に入ってきた。バスが校舎の前に停まった。
降りてきたのは日本共産党の志位和夫委員長とその一行だった。
その取り巻きの人がたくさんいた。

志位委員長は避難所本部の本部長庄司さん(税理士であり石巻市議会議員)と
握手をかわすと校舎に入っていった。

秘書とか共産党の人だろうか? そのあとに新聞記者らしき人やカメラマン。
ビデオカメラを回している人もいた。
総勢20人くらいが、避難所の中に入っていった。

被災地の視察に来たのだろう。庄司さんが一階の各教室を案内していく。
そして二階に上がった。多目的教室。
志位委員長が教室にいるみなさんと握手をして回った。ここは著者が毎日通っている教室である。

志位委員長が、避難者に話しかけた。
「今、お困りのこと、不安に思っていることを、お聞きしたいんですが」
「やっぱ、先のことを考えるとお金のことだな。いつまでもここにいられるか。俺は全部流されてしまったから。仮設住宅もいつ入れるかわからないし」
「お仕事は?」
「今、年金暮らしだ」
「そうですか。今、やっぱり仮設住宅のことが心配ですよね」

そんな話をしている様子を、カメラマンがフラッシュをたいて、パシャパシャ写真を撮っている。
ビデオカメラも回っている。自分が撮っている記録のこともあるが、撮った写真やビデオはどんなふうに使われるのだろう。

「私どもは野党ですけれども、再建のためにしっかりと国がやっていかないといけないと思っています」
と言って出て行った。教室にいた時間は5分だった。
廊下で別のおばさんが、志位委員長に驚いて声をかけた。

それからボランティアの人が寝泊まりする音楽室に向かった。
ボランティアに来ているピースポートの人と握手した。
次に体育館。ヒューマニティ・ファーストのアラースとアヤーズに声をかけた。
このときも、カメラマンが写真をたくさん撮っていた。
それで一行は帰って行った。滞在時間は30分。政治家の視察は短いものだと思った。

湊小学校には、政治家だけでなく有名人もたくさん来た。
政治家や芸能人を挙げると蓮舫議員、桂文枝さん、日本テレビのアナウンサー、田中美幸さん、藤原紀香さん。彼女は日本赤十字社の大使として来たようだ。
ユニフォームを着ていたので、お仕事でもあるのだろう。体育館に人だかりができた。
一緒に写真を撮るのはOKなようで撮影大会になった。


それからカメラを連れてくる芸能人が多かった。
自分が被災地に来ていることをイメージアップに使うのだろうか。
テレビのカメラに向かって「子どもたちと交流できてうれしかったです」
などと、もっともらしいことを言うが
読み聞かせを30分して、サインして握手して終わりだ。
それだけで交流なのだろうか。
テレビカメラなしで来ればいいのに、と思うのだが
子どもたちにとっては、芸能人に会えてうれしいのかもしれない。

このあと
著者は地元の獅子舞、渡波獅子風流塾が(自分たちも被災しているが)
何か元気づけたいということで、近隣の避難所を回っていて
湊小学校にも来て獅子舞を舞い、みんなに歓迎されたことを書いている。

慣れた人は、獅子の口に手を入れて飴玉を渡した。
獅子に頭をかまれるとご利益があるので年配の人はこぞって頭を差し出した。
獅子は順番に頭をかむしぐさをした。

獅子は校舎の中に入って、二階から四階まで全部の教室を回った。
政治家の人よりも大人気だ。
この獅子の場面は著者の映画のオープニングシーンになった。


[No.219] Re: 石巻市立湊小学校避難所 投稿者:男爵  投稿日:2013/06/29(Sat) 17:48
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> > 著者は映画監督である。

おばあさんと孫娘が暮らしている。
家はなんとか2階は無事だった。

働き手の母親が、津波の時に一人水産加工会社に残って帰らぬ人となった。
小学3年生の娘は言う。
 3月11日が日曜日だったら、お母さんは家にいたから、みんなで逃げられたのに。
 でも金曜日だからしかたないよね。

そして、娘は
母の遺骨を墓に納めないで、しばらく
この家に置いてほしいと祖母に頼む。

困った祖母はお寺に相談した。
和尚さんは、そういうことならお墓に納めなくともよい
と言った。

遺骨をしばらくお墓に納めないでそばに置いて
毎日語りかけたりする人はいます。
本にも書いてあるし、そういう人を見たことがあります。