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[No.7742] 『ヨーロッパの民話をたずねて〜3』 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2016/10/11(Tue) 23:34
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『ヨーロッパの民話をたずねて〜3』
画像サイズ: 390×520 (67kB)
  前回で触れたチロルの民話ではそれが、こうなります。

 ゲーテの詩にもとずくデユカスの魔法使いは、男ですが、こちらは農婦で、女中をひとり使っています。

 この女主人は、どういうわけか毎日、夜のとばりが降りるときゅうにそわそわし出し、煙突を通って必ずどこやらへ出かけてゆくのです。そこで好奇心旺盛な女中は、家のものがみな寝静まると、台所のかまどの陰に身を隠して何が始まるのかを見届けようと思いました。そして、ちょうどよるの10時になりますと、女主人が台所に姿をあらわし、人けのないのを幸い、衣服を脱いで、すっぽんぽんになります。

 そして隠し場所から、愛用の塗り薬★を取り出すと、それを全身に塗りたくります。女中は興味津々、一体なにが始まるのかと大きく目を見開いて、逐一その様子をみつめていました。

 女主人は麻を打つ道具の上に腰を下ろすと、口の中でぶつぶつ呪文のようなものを唱え始めます。そして「ここを出て、どこにもない所へよろしく頼む」と呪文を云い終わった途端、あれあれ、これはどうしたことでしょう。とたんに主人の姿は、雲か霞のように消え失せていました。

 翌日、好奇心旺盛な女中は、ひと気のないのを確かめ、足音を忍ばせ台所へ。そこでゆんべ、女主人のやった通りのことをしたうえ、ワクワクした気分で例の呪文を唱えました。ところが、気分が高揚していたせいか、大事な紋句を間違えてしまったらしいのです。呪文はドイツ語で「どこにもないところへ、やってお呉れ」というところを「どこでも構わないから、好きなところへ、やってお呉れ」と云ってしまったらしいのです。

 その結果、どうやら空を飛ぶことだけは出来たのですが、煙突や、人家、樹木など、至る所にぶつかりながら、全身血だらけアザだらけ、のなんとも情けない姿でやっとこさっとこ『縞だらけの草原』とかいうところへ辿り着きました。ご丁寧にも、女中はここでも、集まっていた悪魔たちや、男女の魔法使い等に、あっちに行っちゃあドッシーン、こっちに行っちゃあバッターンとぶつかり通しでした。

 夜の白々明け、アヴェ・マリアの鐘の鳴るころ、なんとか悪魔の角にしがみついて、わが家へ連れてって貰ったまではよかったのです。でも、悪魔の角につかまって家に戻った途端、台所は血の海になりました。

 女中はその夜自分の身の上に、一体に何が起こったのか、何度ひとに聞かれても、一切誰にも打ち明けようとはしませんでした。ただ悪い魔法使いに魔法に掛けられたというばかりです。一方主人の方も、この件に関しては固く口を閉ざしているので、周囲の人たちは、何のことやらさっぱり分からず、まるでキツネに抓まれたような感じだったと云います。

                        終わり

 ★ 話によっては塗り薬が香油になったり、サバト(魔法使いや悪魔がおおぜい集って夜会を開く場所)へ運んで呉れるのが悪魔であったり、黒いヤギだったりします。この話でも、帰りは悪魔の世話になっています。

  添付写真は、マーチャンからお土産にもらった、ドイツ北部の魔女人形です。


[No.7746] Re: 『ヨーロッパの民話をたずねて〜3』 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2016/10/15(Sat) 18:07
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  みなさん、こんばんは。

  国民性なぞは、古くからつたわる民話や、小話などをよむと、なにか手がかりが得られそうな気がして、こういったものは、昔からあっしは、わりと好きです。で、昔話の

 『締めことば』とかいうのがあるようですが、この方では、日本が一番豊富のように思うのですが…。西洋のなどはあまり、バラエティーがないように思います。じつは西洋のは、あまり良くは知らないのですが、日本のでは、あっしの調べたのだけですが、こんなのがありました。

 どっとはらい、どっとはりゃあ、どっとはれ、
 とっぴんぱらりのぷう、とっぴんぱらりのぴい、
 とっぴんからりせんしょのみ、
 これきってw、とっぴんぱらりのぷう、これで、とっぴんぱらりの
 すったごだっごのぴい、
 五葉の松原とっぴんぱらりのぷう、
 いっちょさけポツン柳にとんぼがぶ〜らぶら    などなど。

  でも、これでみると、とっぴんぱらり系が、何といっても一番多いですねえ。

 


[No.7755] とっぴんぱらりの続き 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2016/11/12(Sat) 00:29
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>  『締めことば』とかいうのがあるようですが、この方では、日本が一番豊富のように思うのですが…。西洋のなどはあまり、バラエティーがないように思います。じつは西洋のは、あまり良くは知らないのですが、日本のでは、あっしの調べたのだけですが、こんなのがありました。

 と書いて置きながら、西洋のにマッタク触れていないのも片手落ちだとは思いながら、あっしなりに多忙だったため、大分遅れてしまったが、今日になってやっと書庫から、それらしき本を探し出した。

 前に一度読んだはずだった。神田神保町で古くから古書店を営む大久保書店で購入した。しかも本の奥付きに『日本童話會』の朱印が押してある。童話會というのは、まだ存続しているのだろうか。また、なぜその蔵書を手放したのだろうか。

 なこたあまあ、どうでもいいのだが、発行所の岩崎美術社は、良書をよく出すので有名である。

 この書店は、とくに民俗学に力を入れているようで、同書は80巻ある、民俗民双書の第44巻目にあたる。その方面の権威と思われる三原幸久と云う人が書いている。巻末にはグリムとスペイン民族の昔話を比較対照した表までついている。

 この書をぱらからやっていたら、そこにスペイン民族の昔話の形式という章があった。日本の場合のように、呪文のようなものは出てこないが、短いのでは、さあ話はおしまい、なんてのが多いが、日本のように、クラック・クリックで話は終わった、なんてのもあることはある。

 そのほか、みんなはしあわせで/うづらを食べた/わたしには/鼻先に骨をつきつけてくれただの、わたしも行って帰ったがわたしには何もくれなかっただのという、僻みっぽいのもある。なかには、幸福の手紙のように、この話をわたしから聞いた人は、わたしに何か話しておくれ、とかいって、聞いていたものに、話を強要(^^♪するものまである。

 さらに詳しく知りたい向きは、直接同書に当たられるようにお願いする。違う眼で見ればまた、新しい発見があるやも知れぬ。   終わり