> 深田祐介:西洋交際始末
> 西洋版「紀の国」へ > 北杜夫が最初に上陸したヨーロッパの土地がポルトガルだったのは幸せだった。
ポルトガルの楽しい話は実は少数派であって この本には厳しい異文化体験やカルチャーショックなど 海外でまごつく日本人の話をおもしろおかしく書いています。
はたで見ていて、日本にだけいてでは ああおもしろいで終わってしまいますが 自分がこの本の世界に投げ込まれたら、それは大変なことになりそう。
というわけで、ざっとメモ的に紹介しましょう。
異人が妖怪に変わるとき 駐在員の任期が終わり日本に帰国するようになって 英国で使っていた車を知り合いのイギリス人に売ろうとして 一応整備会社に持っていって、どこも問題ないという証明書をもらって 知人の某レディに見せて適正価格で買ってもらおうとしたら、レディは魔女に変身して エンジンのかかりが悪い、ブレーキの利きが甘い、など難癖をつけ こちらの期待の買い取り価格と大きく違う。別の英国紳士に話してみても やはりあら探しばかりで安い値段でしか買おうと言わない。 頭にきた駐在員はイギリス人に売るのはやめて後任の日本人に譲ってきた。 これはよく聞く話で、ヨーロッパ人はダメモトで、とにかく自分の希望を ぶつけてくる。そこから実は交渉が始まるのだが、疲れる日本人はもう 交渉する元気もなくなる。
われ、いずれにありや 家族旅行でスペインに出かけ闘牛を見に行った著者は そのとき日本人のお婆さんの面倒をみることになってしまった。 著者はマドリッドに友人がいたから、その友人を頼って行ったのだが 闘牛場でゲーム半ばのとき、妻が指さす方向に闘牛を見ているのに疲れた日本人が 闘牛場を出ていくので、では我々もと闘牛場で出て行こうとしたとき 日本人の二人のお婆ちゃんがついてくる。 聞けば日本から団体できたのだが同行者は闘牛を見るのが辛くなって 男たちが引き上げていき、女も帰って行ったらしく、気がつくと二人だけに なってしまった。 ところが、このお婆さん宿泊のホテルの名前も住所も(ホテルの電話番号も) 知らないという。なんとかならないでしょうかと頼まれて、著者の友人は よしと引き受けたがマドリッドのホテルは多い。 泊まっているホテルは街の真中にあったのか郊外にあったのか 大きなホテルか小さなホテルか、ボーイはどんなかっこうの制服を着ていたか ということを聞いても、さっぱり要領を得ない。 「あのくさ、玄関わきの広間にくさ、西洋の鎖が飾ってあったくさ」と どこかの方言か「くさ」を連発する。 結局著者の友人がかたっぱしから市内のホテルに電話して30分後に この団体の添乗員が蒼い顔で駆けつけてきた。
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