こうなると、ドイツ関係でのあっしのストックは、もうこの人しかいない。佐貫亦男さんである。
このひとは一言で云えば、ヒコーキ屋さん。また、アルピニストでもある。
著書には他に「ドイツ道具の旅」*というのもあり、名著だが、今回は上掲書を取り上げた。
北杜夫のお兄さんである茂太さんとも仲が良く、会えば必ずドイツか、飛行機の話になってしまったそうだ。
この本で面白かったのは、相似発想の例で、人力車の不安定な設計が、ライト兄弟のフライヤー一号機に使われていることを発見したくだりである。
ほかにも、そろばんは、デジタルとアナログを融合させた画期的な計算機で、みのとすげがさは、高湿度の環境に適したレインハット、レインコートとしてすぐれ、よろい、かぶとも通風性の点で、西洋の鎧兜にたち勝る発明、だと。
こうして、日本古来の種々の道具をすべて点検、長所をつぎつぎ拾いだしている。そば屋の出前台も、佐貫先生の手に掛かれば、『アポロ宇宙船で使われている加速度計をジャイロ、すなわち、精密なコマで宇宙空間に対し方向を固定する台である安定プラットホームの日本版』ということになる。
下駄も、簡単にぬげない閉ループ的発想で、脱げやすい、開ループ的発想の産物である西洋のサンダルの上を往く、スグレ紋ということになる。
副題のどうしても『ひょうたんからコマを出』してみたい人には、必読の書である。
*道具関係では、「道具の旅パート2」もあるし、「ドイツの街 道具と心」というのもあるし「道具の再発見」「ドイツ 道具の旅 終わりに近く」「ドイツMADEIN GERMANY」というのもある。考えてみれば、飛行機だって佐貫さんには道具の一種だったのかもしれない。ちなみに、ヒコーキの方も「ヒコーキの心」「続・ヒコーキの心」「続々ヒコーキの心」とケッコウ沢山ある。
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