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[No.626] Re: 演歌の明治大正史 投稿者:男爵  投稿日:2011/12/17(Sat) 17:40
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> 演歌の明治大正史
>
> 著者添田知道は添田唖蝉坊の息子なので
> 添田唖蝉坊の歌が多い。

       ああ金の世
ああ金の世や金の世や     地獄の沙汰も金次第
笑ふも金よ泣くも金      一も二も金三も金
親子の中を割くも金      夫婦の縁を切るも金
強欲非道と譏(そし)らうが  我利我利亡者と罵(ののし)ろが
痛くも痒くもあるものか    金になりさへすればよい
人の難儀や迷惑に       遠慮してゐちゃ身が立たぬ

ああ金の世や金の世や       希望(ねがい)は聖き労働の
我に手足はありながら       見えぬくさりに繋がれて
朝から晩まで絶間なく       こき使はれて疲れはて
人生(ひと)の味よむ暇もない   これが自由の動物か

ああ金の世や金の世や       牛馬に生れて来たならば
あたら頭を下げずとも       いらぬお世辞を言はずとも
すむであらうに人間と       生れた因果の人力車夫(くるまひき)
やぶれ提灯股にして        ふるひをののくいぢらしさ

ああ金の世や金の世や       この寒ぞらにこの薄着
こらへ切れない空腹(すきはら)も なまじ命のあるからと
思ひ切ってはみたものの      齢(とし)とる親や病める妻
飢ゑて泣く子にすがられて     死ぬにも死なれぬ切なさよ

ああ金の世や金の世や       憐れな民を救ふべき
尊き教への田にさへる       我儘勝手の水を引く
これも何ゆゑお金ゆゑ       あああさましの金の世や
長兵衛宗五郎何処に居る      大塩マルクス何処に居る


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