ナップザックを買いたいと思って出かけた。 有名店へ入ると店主がすぐ寄ってきた。私はそばに来られると弱い。たいていは断れない。ザックは14,000円となっていた。 「消費税をサービスします」 と店主。私の財布には12,000円くらいしかない。あとは小銭。ぐずぐずとするのを見て店主は、 「1割おまけして、13,230円にします」 と言った。小銭がいくらあるかわからないが、足りそうになかった。 車から降りるときに、夫から 「お金はあるか。持っているか。だいじょうぶか」 と、くどく念を押されたのだ。 「そんな高いの買わないからだいじょうぶ」 と別れたのだ。お金をもらっておけばよかった。昼の食事代を出さなければよかった、と思ってもあとの祭りだった。 「いくらお持ちですか」 と言いながら、台の上にお金を出すようにというしぐさをした。私は釣られて、持ち合わせを全部出した。1万円札1枚、千円札2枚、5百円玉1枚、百円玉5枚、十円玉11枚、5円玉3枚、一円玉18枚で、百円足りなかった。店主は数えてくれながら、 「13,130円にしておきましょう」 と言った。それでも儲かるんだなと、心の中で思いながら、 「すみません。ありがとうございます」 と私はていねいに頭を下げていた。客なのにおかしなものと、心のどこかで思いながら。 お金を全部出してしまって、財布の中には一円玉が13枚、帰りの電車賃がないと思ったが言えなかった。私は困ったことになったと思った。
外へ出て「どうしよう、どうしよう」と考えていたとき、デパートの商品券が4,000円分あることに気づく。それで買い物をしてお釣をもらい帰ることにした。野菜を1,646円買った。そんなことでやっと帰ってこられた。
商品券がなかったら、以前やったことがある交番か、警察に行ってお金を借りたのかと?
呑気な私のひやっと事故です。
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