画像サイズ: 254×348 (39kB) | 左掲の写真は、1988年初の『ニューズ・ウイーク』(1月11日)のセンセーショナルな表紙である。表紙が掲げる特集記事は、一般に「ミトコンドリア・イヴ仮説」あるいは「イヴ仮説」と称される分子人類学理論の解説であり、次のような衝撃的な内容であった。 ――細胞の小器官ミトコンドリアのDNAは母から子供(娘)へと母系遺伝する。全人類の母系祖先を遡ると、約20万年前のアフリカにいた一人の女性(ミトコンドリア・イヴ)に辿りつく。すなわち現生人類の祖先は一元的にアフリカで発生した。
「ミトコンドリア・イヴ」とは誤解しやすい言葉だが、人類が一人の女性から始まったわけではない。彼女には母、祖母がいたし、同時代を生きた他の女性もいた。が、他の女性のミトコンドリアDNAは人類の歴史のなかで消滅してしまったのである。
ミトコンドリアDNAの母系遺伝に対応して、Y染色体DNAが父系遺伝する。全人類の父系祖先を遡るとアフリカにいた一人の男性「Y染色体アダム」に辿りつく。なおミトコンドリア・イヴとY染色体アダムは夫婦ではない。 (つづく) |