松本清張「ゼロの焦点」
> 松本清張「ゼロの焦点」に出てくる能登半島の鉄道は > 昭和33(1958)年当時の小説ですから > 金沢−津幡−羽咋−七尾−和倉温泉−田鶴浜−輪島 > の国鉄健全時代でした(JRは1987年から)。
> そして、この小説の大事な舞台となる > 羽咋−高浜−三明 > の北陸鉄道能登線があったのでした。(1972年廃止)
クライマックスの舞台はどこか?
失踪した夫を探していくうちに、すべての事実がわかったヒロインは 社長夫妻の泊まっている和倉温泉に行きます。
しかし、社長夫人が羽咋に行くと言って突然出かけ それを知った社長も夫人の後を追って出かけたと知って ヒロインは急ぎのコースをたどることにします。
社長夫人たちは、おそらく和倉温泉から羽咋に行き、そこから北上して高浜方面に向かうはず。
ヒロインは和倉温泉からタクシーで西に向かい峠越えをして福浦の港に着いてから、高浜方面に南下するというコースをたどるのです。
小説「ゼロの焦点」を読み直してみると クライマックスの舞台となる場所の手かがりの 重要な文章は下記のようになります。
●和倉温泉から羽咋に行く社長夫人、その夫人を追って後から出かけた社長 ●話を聞いたヒロインは、タクシーで雪の峠を横断し、和倉から福浦へ急ぐ。
●タクシーは福浦の港から南に向かい高浜の方に行く。 ●曽根益三郎(ヒロインの夫鵜原憲一の偽名)の投身自殺の場所 沖の舟を見つめる社長とヒロイン
詳しい説明や記述は 「北信越・駿河エリア」に書きましたから メロウ倶楽部の会員の方は、そちらをご覧ください。
この場所はヒロインにとっては3度訪れた場所なので 最後は迷わず駆けつけることができたのです。
一度目は夫の捜索願を警察に届けたら、身元不明の自殺者があったことを知らされ 警察に駆けつける。 ○高浜の警察分署 自殺者は夫ではなかった。 ○最近も同じ場所で自殺者があったが身元引き取り人が来た。
○断崖のある海岸は赤住だと土地の人から聞く。 バスで20分 断崖の上に立つヒロイン
二度目は 夫の仕事の取引会社を訪問したとき ヒロインは、さいきん夫を亡くしたというスラング英語を話す受付の女田沼久子が気になる。 ◆ヒロインは高浜の町役場を訪ねる。 ◆田沼久子の夫は牛山(役場から4キロ北)の海岸の断崖から投身自殺 ◆そこは能登金剛という場所だ。
能登半島の旅行を終えてから「ゼロの焦点」を読み直しました。
地図を見ながら上記の文章を照らし合わせると やっぱり、クライマックスの舞台は「ヤセの断崖」ではないと思います。
地図では 「ヤセの断崖」(能登金剛) そのずっと南に「厳門」(能登金剛) それからさらに南下して 「福浦港」 さらに南に下がると 「赤住」 さらに南下して 「高浜」 もっと南下して 「羽咋」 です。
おそらく 松本清張は能登金剛の厳門まで来て その付近に小説の舞台を考えていたと思います。
映画をつくるとき 一番絵になるのはどこだろう、それならヤセの断崖だ ということになり、ヤセの断崖が選ばれたのでしょう。
そういうわけで小説の文章とは整合性がとれませんが 映画と小説は別のもの ということで、そうなったのだと思います。
厳門にあった松本清張の短歌を思い出してみてください。
|