[No.7037]
Re: 高が周縁、されど周縁
投稿者:唐辛子紋次郎
投稿日:2015/04/20(Mon) 23:07
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これを書くにあたって、何かがその動機になったはずだが、それが思い出せない。きょう、その元になったものが何かがはっきりして、胸のつかえのようなものがなくなり、急にスッキリした気分になれた。
それはあっしのとは一寸違うのだが、朝日文庫の「漂流物事典」という本であった。著者の石井忠という方は、本当にすごい方で、玄海の沿岸に流れ着く『漂流物』にただならぬ執着を抱き、22年間も海岸をさすらい、集めた漂流物がココヤシだけで630個、他のものを含めると、総数が6000点にもなるというから、只者ではない。
海というものは、何でも流れ着くらしい。あっしなど、島崎藤村せんせいが「名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実一つ」と歌ったので、ヤシの実一個くらいしか思い浮かばなかったが、石井先生によると、オウムガイから古銭、貯金箱、韓国製品から人魚、瑪瑙、異人やインドゾウまでが、海岸にやって来るそうである。
この先生のコレクションに比べたら、大抵の人のは、あっしのに限らず、ちゃちでお話にならない。なお、この本のいいところは、ただ最近先生の集めたのだけを記すのでなく日本書紀や万葉集、古今著聞集、風土記などを随時引用しているので、ひじょうにベンキョーにもなる。
ぺージをめくるうち、沖縄で見たモモタマナがあり、たいへん懐かしい思いをした。沖縄では説明板に、コバテイシと書いたものもあった。だが、駐車場の番人は、モモタマナと発音していた。
この実(仁)を、先ごろ、天皇が訪問されたパラオでは珍味とすると書いてあったが、沖縄では人間は食せず、あれは蝙蝠の好物だと云っていた。
同じものをとっても、正に、ひとさまざま、だと思った。