画像サイズ: 298×450 (87kB) | さて、スペインのバルセロナでは、「ゼッタイ行きたい!」と思っていたのがピカソ美術館だ。下町のせせこましい場所にあるのだが、館内はまさに別世界だった。私がここを選んだのは、彼のキュビスム以前の世界、つまり立体派になる前のピカソがどうしても見たかったからだ。
館内には当然、キュビスム以前はおろか、陶器までが並んでいたが、キュビスムでは≪ラス・メニーナス≫の模写がスゴイ!
ピカソはベラスケスが好きで、その作品を何度も模写した。その数何と57点。ピカソという人はもともと、精力的な人とは知っていたが、模写の数に圧倒された。ここに並んでいるのは完成品なので、その下絵まで入れたら、膨大な量になるだろう。ここで、感じたのは、かれはよく言われる『天才』ではなく、むしろ努力の人だったということである。
もっとも、そこに並んでいる絵は、ベラスケスの誠実な模写ではなく、すべて、ピカソ流にデフォルムされてはいるが…。
ピカソだけでも収穫だったが、さいわい時間が取れたので、スペインのバスク自治州にあるビルバオ・グッゲンハイム美術館でちょうどやっていた「ブラック展」も観ることができた。展示数が非常に多くて、歩き疲れるほどだったが、見ごたえがあり、実に楽しかった。
ピカソとブラックというキュビスムの2巨匠の絵を、期せずして観られたのだ。何という幸運だろう。グッゲンハイムでは、屋外展示も充実していて、クーンズの≪パピー≫、≪チューリップ≫、カプーアの≪大きな木と眼≫、ブルジョアの≪ママン≫など、これらは誰でも無料で観ることが出来る。
この≪ママン≫は、東京、六本木ヒルズの大蜘蛛の兄弟分である。ここで≪ママン≫を観た人は、おそらくビルバオに来て、懐かしい思いをするのではなかろうか。(つづく)
写真の絵は、模写の42番である。 |