この本はこの部屋の掉尾を飾るのに相応しいかな、(*^_^*)なんて、考えながら書きこんでいます。
訳注を抜かすと、たかだか70ページほどの小さな本です。しかし、本好きにはたまらない一本です。
それは、色々テレビだのコンピュータなどが、出現してもこの本の主人公、じつは主人公は人間でなく「本」なのですが、かれが「まだまだやれる」と叫んでいるからです。
この主人公は、あっしら老年者とかさなるような気もします。「まだまだやれる」のです。
著者は、イタリア・テレコムの重役。古書のコレクターとしても有名だ。かれの書斎には、一萬弐千冊もの本がひしめいている。また、『本』職では、他の作品で国内の文学賞も受賞している。
同書は、古書店の片隅で買い手を待つ本の一人語りで始まり、目出度く四番目の買い手、つまり、この本の著者が見つかり、幸せに浸るかれの一人語りでこの本も終わる。
その間、持ち主の思い出、戦争を含む社会の変動の思い出がつぎつぎ現れて、ページを彩る。
本という、批評家の賛辞や、美しい装丁の衣装をまとった華やかな存在の反面、売れないとリサイクル専門の段ボール屋行きの、厳しい人生へ向けた、著者の温かいまなざしが感じられる好著である。
ちなみに、著者の本当の姿は、アナログ人間でなく、デジタル人間だそうである。
* アンドレーア・ケルバーケル著「小さな本の数奇な運命」
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