[No.332]
名画「自転車泥棒」
投稿者:唐辛子 紋次郎
投稿日:2013/09/21(Sat) 16:05
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失業者のあふれる職安前からこの映画は始まる。自転車があれば、ビラ張りの仕事にありつけると云うのでアントニオはなけなしのお金を工面して、自転車を質屋からだし、張り切って初仕事に出る。
ところが、現場に着いたアントニオが、梯子を使ってリタ・ヘイワースのポスターを壁に貼っている隙に、商売道具の大切な自転車をかっぱらわれてしまう。そこでアントニオは仲間や、息子のブルーノと泥棒市などを回って懸命に探すが、どうしても見つからない。
ところで、イタリアの映画人は、子役の使い方がじつに上手い。ここでも、主役のアントニオが食われるほどの演技をする。戦中もそうだが、終戦直後の困難な時代を経験したものには、この映画の云わんとするところが、痛いほどよく分かる。
白黒の画面がまた一段と効果を上げているように思う。どこの国でも、当時は似通った事情があったとみえ、世界中の映画ファンの共感を得、有名なアカデミー賞を受賞している。
日も暮れかかって、遂に策の尽きたアントニオは、けっきょく自分自身がひとの自転車を盗んでしまう。ここで終れば、マッタク救いがないのだが、さすがデ・シーカ監督は被害者が、盗んだアントニオを警察に突き出すことを止めることによって、幕切れを後味の悪いものから救っている。
この時にも、アントニオに寄り添う息子のブルーノが、必死になって父を庇っていた。