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Re: 松根油

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Pan

通常 Re: 松根油

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2004/10/19 16:38
Pan  常連 居住地: 大阪府  投稿数: 59
 松根油掘りは身近かでした。

 先ず mikas239 さんの仰《おっしゃ》っているのは、松ヤニの事だと思いますが、丁度ゴムや漆《うるし》の木
から樹液を取るように、幹の肌を軽く削り取ってから斜めに新しい傷を深く付け、したたり落ちる樹液を集めました。

 毎日一回新しい傷を付けに廻《まわ》って、1本の松からコップに一杯採るのに1週間ほども掛かりました。
 この樹液が何に使われるかは知りませんが、あとで松が枯れてしまったものが多かったです。

 これに対し松根油は、琥珀《こはく》のようになった赤松の根を大きな鉄釜《てつがま》で乾留《かんりゅう=熱
分解》
して薄いコールタールのような姿で採りだした油でした。

 伐採した赤松の根が土の中で朽ちた後、油の多い部分は虫にも食われず茸《きのこ》も生えず、骸骨《がいこ
つ》
のようになって土の中に何年も残っています。古い物の方が良いと聞きました。

 山の急斜面でこの根を掘り出す作業も、それを運び出す作業も大変な重労働で、危険でもありました。

 当時中学生だった私たちにはさすがにこの仕事は回ってきませんでしたが、手伝いはしました。

 村道の交差点には、あちこちから供出《きょうしゅつ=割当量を差し出す》された松の根が山のように積んであ
りました。
 集落単位に供出の割り当てがあったと思います。

 村の一角に設置された大きな炭焼き釜のように見える乾留釜は、ドラム缶何杯かの松根油の原油を取り出す
試運転の段階で敗戦を迎えました。

 敗戦後も長い間その釜の残骸《ざんがい》が残っていて、私には敗戦のシンボルのように思えました。

 精製して航空燃料にすればかなりの高性能が出ると聞きました。

 その釜のあった場所を今でも時々通りますが、松根油を思い出さない時はありません。

 

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