Ⅱ キリスト教宣教師 淵田美津雄

土曜日曜も休日なしの猛訓練に堪え抜いた　若い部下たちから兄貴々々と慕われ愛国心の発露から先頭切って　ハワイ真珠湾に突入した　海軍大佐　淵田美津雄。

真珠湾《パールハーバー、日米が開戦した湾》の英雄と称えられ　太平洋各地を転戦しながらも　ミッドウエイで機動部隊航空母艦に大打撃を受け　さらに苦しい転戦
フィリピン従軍もあったとか。1945-08-06 広島原子爆弾の被爆にあたり被害調査隊の一員だったと　ＮＨＫドキュメンタリー番組は伝えている。

1945-08-15 日本敗戦となり　極東軍事裁判《＝敗戦後日本の戦争犯罪人に対して東京で行われた裁判》に度々証人出頭させられながらも　何とか戦犯《せんぱん＝戦争犯罪人》は免れ　生きて故郷の土をふむ事が出来た。緑の山河　戦争のない平和　青空のもと畑の土を耕しながらも　淵田美津雄　は悩んだ。

戦陣に散って行った部下たちの顔と顔。殺し合いの戦争　破壊の戦争　どうすれば良いのだろう。　にくしみと復讐《ふくしゅう》から抜け出す方法はないだろうか？

ふとフィリピン捕虜収容所で見た　教会でのワンシーンが思い出された。　罪を知り　許しあい　祈りの心を教えた牧師の一言。
聖書を求め　祈りの心にたどりつき　洗礼を受けるまで　どの位かかったのだろう。　ここに48才の　淵田美津雄　はいた。

生きて帰った残り少ない戦友の中には　神仏から急転キリスト教を説く　淵田美津雄　を良しとしない者もいたようだ。
しかし信念は固かった。

静かな信仰は　アメリカ牧師の知る所となり　1952 アメリカに呼ばれ　もと真珠湾の英雄が　ノーモア　パールハーバー　と静かに説き　平和の伝道師はアメリカ中をまわった。

迎えに来たご長男は　その様子をつぶさに見ることが出来た。
『夏は近い』膨大な波乱多かった自叙伝の編集も手伝った。
1976-05-30 73才の　淵田美津雄　は静かに天国へ。
長女の方はアメリカ人牧師と結婚。子孫は日米と米国籍とか。

世界平和の一物語ではある。　　　　　　　　　とまと。