[No.241]
Re: 京のおばんざい
投稿者:男爵
投稿日:2013/01/20(Sun) 16:43
[関連記事] |
> > ということで
> > 12月、1月、2月の
> > 京のおばんざいを少しずつ紹介してみましょう。
2月
おいものおかい
三錠室町聞いて極楽居て地獄
お粥(かい)かくしの長のうれん
お店(たな)といわれる中京の大問屋さんは、店構えも立派で人聞きはよいけれど、実際に奉公をしてみると、なかなかつらいもんやったらしい。
第一、朝はおかいさんで、食べ盛りの丁稚さんは、いつもおなかをへらしてはった。うちうらはそれほどしまつで、そこを隠すように、長のうれんが下がっている。
それに引き替え、料亭の名がつく朝がゆは、通人さんのお口に合うもんで、一般には縁遠い、ぜいたくなもんやった。旦那衆は、それを召し上がる。
わたしらはまたわたしらで、霜柱が立つ朝にはおいもを入れたほかほかのおかいさんが食べたい。
禅宗のお寺でも、朝食のことは粥座(しゅくざ)というて、雲水さんは、お椀に顔が映るような、うすいおかいをいただかはるのやと。これも修行で、黒豆入りやと笑われる。目の玉が映っているというたとえ話である。
ゆきひらにお米をといで、たっぷりのお水を張り、おかいさんはとろ火でコトコトと炊く。そして、ふきあがったらサイコロに切ったさつまいもを入れて、塩味でさらっと炊き上げる。あんまりかきまわさんように。おしゃもじでかきまわしすぎると、おかいさんはこてこてになってしまう。
ひねの水菜を細こう刻んで、土しょうがをしぼり、おかいさんにまぶす。おいもの甘味と塩加減のほどのよさ。あたたまるほどに、うれしいなってくる。これも、人生の味やろうか。しんみりと生きる。ひねは古漬けのことをいう。
ところどころ京都の言葉がわからないので、原文のままに紹介しました。
(メインのテーマに関係のない部分は省略)
この人の文章はあんがい有名で、他の本でも紹介されているから、あとでその本も載せてみましょう。
こういう文章を書ける京都の女性もいなくなり、内容を理解できる女性たちも少なくなっていくということは、書いている本人も他の読者もわかっていたことでしょう。
京都の食文化も、時代ともに変わっていく。日本の社会も環境も変わっていくのだから。