> > 石井好子:巴里の空の下オムレツのにおいは流れる 河出文庫 > ブルギニヨンのための柄の長いフォークはスイスにしか売っていない。 > 日本でするときはさいばしで代用できる。 > このフォークはブルギニヨンのほかにフォンデュのときにも使うので、スイスでは必需品なのである。 > フォンデュについては次の記事で説明します。
フォンデュはレストランでも出すが、家庭料理としてスイス人の常食のようだ。
たべなれるとおいしい、なべ焼きうどんがなつかしいのと同じような感じのものだ。
スイスチーズ(丸い小さな穴のあるグリエールチーズをスイスでは使う)4人前として5百グラム細かく切っておく。 小さい土なべかグラタン皿(火にかけてよい焼きなべなら何でもよい)の中ににんにくをすりおろし、カップ5杯の白ブドー酒(辛口で軽いものがよい)をそそいで火にかける。 煮たたせず、あたたまったところに、切ったチーズを少しずつ入れ、しゃもじでかきまぜながら、クリームのようにとろとろになるまでかきまぜつづける。
とろとろに煮上ったら、メリケン粉か片栗粉をほんの少し入れてつなぎにし、テーブルの上のアルコールランプの上にこのなべをのせ、弱い火であたためながらフォークにフランスパンをちぎってさし、それにフォンデュをまきつけるようにして食べる。
パンはもちろん食パンでもよいけれど、硬いほうがおいしいから、食パンならみみの所がいいが、コッペパンのほうがなおいい。
パンのまわりにとろっとしたチーズがかぶさっているから、とても熱い。舌やうわあごをやけどしないようにフーフーふきながら食べるのは、寒い戸外から帰ってきたときには、有難くうれしく感じられる山小屋料理だ。
白ブドー酒のない場合は、白ブドー酒の量の半分の水でつくる。はじめにカップ2杯半の水に少量のバタとにんにくのすったのを入れて火にかけ、あまり熱くならぬうちから5百グラムの細かく切ったチーズを少しずつ入れ、フォークでつぶすようにしながらゆっくりとかし、ドロドロになってきたら出来上がりだ。
フォンデュを作るとき、注意することは、強い火でぐらぐら煮たたせないこと。
この料理はあらたまった席には向かないけれど、日曜日のお昼や夜食などには、ちょっと変わって喜ばれると思う。
日本や中華料理になべ料理は多いが、西洋料理には一つなべをつつきあって食べるという料理は少ない。その中でこのブルギニヨン、フォンデュはめずらしく食卓の上に火をおき、お互いのフォークもふれあうばかり身近に、同じものを食べるのだから、変わった料理といえるだろう。
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