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[No.193] 巴里の空の下オムレツの7においは流れる 投稿者:男爵  投稿日:2013/01/15(Tue) 06:58
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石井好子:巴里の空の下オムレツの7においは流れる 河出文庫

戦後まもなく渡ったパリで、下宿先のマダムが作ってくれたバタたっぷりのオムレツ。
レビュの仕事仲間と夜食に食べた熱々のグラティネ。

第11回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。

「オムレツは強い火でつくらなくてはいけない。熱したバタにそそがれた卵は
強い火で底のほうからどんどん焼けてくる。それをフォークで手ばやく中央にむけて
前後左右にまぜ、やわらかい卵のヒダを作り、なま卵の色がなくなって全体が
うすい黄色の半熟になったところで、片面をくるりとかえして、火を消し
余熱でもう一度ひっくりかえして反面を焼いて形をととのえたら出来上る」

「サラダ・ニスワーズでは、じゃがいもは、ゆでて冷えたところで皮をむき
4つ切りにしておく。トマトは皮はむかず、みかんの袋のように8つに切っておく。
グラティネなら、玉ねぎ中2コを出来るだけのうす切りにして
茶色になるまでバタでいためる。火を強くしないで、気長くまぜる。
玉ねぎがベトベトになって、水気がなくなってきたら、火を弱めて
こがさないようにいためてゆく。切りいかの佃煮のようになってきたら出来上がり」

簡潔で的確なレシピのなかに、「みかんの袋のように」「切りいかの佃煮のように」
といった、実体験にもとづいた感覚的な比喩がまぶしてある。

本書の「料理」に関する記述はすべて、定型をいったん噛み砕き
他人にではなく、自分にわかりやすいイメージに置き直したうえでなされている。
どこまでも実用的でありながら、それが地の文に溶け込むことによって
やわらかい言葉のヒダを生み、フランス、アメリカ、イタリア、スペイン
そして日本と、国境を越えた食の連鎖を引き起こす。
読めば読むほど紹介されている料理が食べたくなり、また、人に伝えたくなる。
これはじつに、稀有なことた・
 〈堀江敏幸 作家・仏文学者〉

フランスに長く住んでいたから
〈日本に帰ってきたら〉七草がゆが食べたくて
八百屋にたのんで材料を持ってきてもらい、塩味だけのぞうすいをつくって食べる。

さっぱりして、おいしい「しゃぶしゃぶ」
これに似たものを、日本から来ていた人にパリでごちそうになったことがある。

「しゃぶしゃぶ」とは似て非なるものといえるブルギニヨン
これはスイスのホテルで雪のふる夜、友人の歌手やコメディアンと食べた
なつかしい料理である。


[No.200] Re: 巴里の空の下オムレツのにおいは流れる 投稿者:男爵  投稿日:2013/01/16(Wed) 10:12
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どうもPCのせいで余計な文字が入るようです。

石井好子:巴里の空の下オムレツの7においは流れる 河出文庫
          ↓
       巴里の空の下オムレツのにおいは流れる


> 戦後まもなく渡ったパリで、下宿先のマダムが作ってくれたバタたっぷりのオムレツ。

白系ロシア人の部屋に下宿していたらしい。
 (白系ロシア人というのは共産主義に賛成する赤色ロシア人に対抗する意味だということを後で知った)(つまり共産主義の国から逃れてきたロシア人)

経済的にゆとりがないロシア婦人のマダム・カメンスキーのつくるオムレツは何も入らない〈フランス風の〉プレーン・オムレツだった。
バタをたくさん使ったおいしいオムレツは夕食。 それを石井はご馳走になる。

石井はまずアメリカで音楽と演劇の学校に通う。
そのとき、彼女の下の弟と同級生だった犬丸一郎〈後に帝国ホテル社長〉も
アメリカに渡りホテル学校に通っていた。
二人は貧乏学生同士ゆえ、いつも一緒に貧しい食事をしたりしていた。
石丸の学校のワイナリー見学には一緒に参加してワインをたらふく飲む。

二人で場末のクラブにルイ・アームストロングの演奏を聞きに何度か通う。
最終日に、たびたび来てくれてありがとうとお礼を言われたとき
彼女は歌手だと言うと、それではステージで歌ってごらんと言われて
石井は「二人の恋人」を歌った。
 アームストロングのトランペット、トロンボーンはジャック・ティーガデン、
 ピアノがアール・ハインズ、ドラムがゴージー・コール、クラリネットがバーニー・ビガードという豪華メンバーだった。

石井は船でフランスに渡る。
やがて石丸もパリに石井を訪れている。

あつあつのポムフリット〈フレンチポテト〉はおいしい冬の食べ物だった。

ほかにも色々な食べ物が出てくるが省略します。


[No.242] Re: 巴里の空の下オムレツの7においは流れる 投稿者:男爵  投稿日:2013/01/20(Sun) 18:59
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> 石井好子:巴里の空の下オムレツのにおいは流れる 河出文庫

> 「しゃぶしゃぶ」とは似て非なるものといえるブルギニヨン
> これはスイスのホテルで雪のふる夜、友人の歌手やコメディアンと食べた
> なつかしい料理である。

ブルギニヨンについて詳しく書いていきます。

テーブルの上にはアルコールランプの火がもえていて、その上に油をたっぷり入れたなべがのっていた。
大皿の上には2センチ角ぐらいにコロッと切った、山かけのまぐろさながらの牛肉がたくさんのっていて、別の小皿には三種類のソースが出ていた。

ソースは、トマトケチャップの中ににんにくをすりこんだもの。
(家で作るとき、にんにくのきらいな人がいる場合は、玉ねぎを少しすって入れる)

マヨネーズにトマトケチャップをまぜてローズ色にしたもの。
(マヨネーズの中にケチャップを入れると甘みが出て味が柔らかくなる)

タルタルソース、マヨネーズの中にピクルスのみじん切りを入れ、レモン汁を少々ふりかける。
この三種類だった。

油の煮だったところに、ブルギニヨンのための特別柄の長いフォークの先に肉をさして、そのままジュッと焼く。

なま焼けのすきな人はすぐとりあげて好みのソースをつけて食べるし、よく焼きたい人は少し長く油につけておけばよい。
牛肉のから揚げみたいなものだが、自分で好きなだけ焼くということが楽しく、わが家でやってみたら好評だった。お客さまにだしても珍しがられるし、その上、手間がかからなくて助かる。

ケチャップやマヨネーズではさっぱりしない人のために、私はおしょう油の中に、ねぎの細かく切ったのを入れたソースを作っておくが、はじめは西洋風のソースで食べていた人たちも、お腹がいっぱいになるにつれて、和風のソースで食べるようだ。

スイスでこの料理を食べたときは、その後にレタスのサラダを食べて終わりだったけれど、いま家でブルギニヨンを作るときは、肉ばかりではちょっとものたらない感じもするし、また財政の方もたまらないので、別皿にじゃがいもと人参を1センチ幅の輪切りにして固めにゆでておき、他にピーマン、ねぎなど、なまで出しておいて揚げることにしている。

ただし、野菜類を食卓の上で揚げるときは、油がはねる心配も多いので、メリケン粉か片栗粉をまぶして揚げるほうがよい。

ブルギニヨンのための柄の長いフォークはスイスにしか売っていない。
日本でするときはさいばしで代用できる。
このフォークはブルギニヨンのほかにフォンデュのときにも使うので、スイスでは必需品なのである。

 フォンデュについては次の記事で説明します。

ブルギニヨンは牛肉サイコロの揚げたもの(天ぷらみたいなもの)ということだが
鶏肉でも豚肉でもよさそう。
ピーマンやサツマイモや人参やしいたけと応用が広がるが、油なのではねる対策として衣をつける必要があろう。
衣をつけてはねる対策をするなら、アジやタラのような魚、イカ、タコという応用もあろう(海鮮ブルギニヨン)。

油の中に水分のある食材を入れるとはねる危険があるし、天ぷらの火事から連想するように、このブルギニヨンはやや緊張する料理だ。

それに対して、しゃぶしゃぶの方が熱湯なので、まだ落ちついて対応できる。


[No.246] フォンデュ 投稿者:男爵  投稿日:2013/01/21(Mon) 15:04
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> > 石井好子:巴里の空の下オムレツのにおいは流れる 河出文庫

> ブルギニヨンのための柄の長いフォークはスイスにしか売っていない。
> 日本でするときはさいばしで代用できる。
> このフォークはブルギニヨンのほかにフォンデュのときにも使うので、スイスでは必需品なのである。

>  フォンデュについては次の記事で説明します。

フォンデュはレストランでも出すが、家庭料理としてスイス人の常食のようだ。

たべなれるとおいしい、なべ焼きうどんがなつかしいのと同じような感じのものだ。

 スイスチーズ(丸い小さな穴のあるグリエールチーズをスイスでは使う)4人前として5百グラム細かく切っておく。
小さい土なべかグラタン皿(火にかけてよい焼きなべなら何でもよい)の中ににんにくをすりおろし、カップ5杯の白ブドー酒(辛口で軽いものがよい)をそそいで火にかける。
煮たたせず、あたたまったところに、切ったチーズを少しずつ入れ、しゃもじでかきまぜながら、クリームのようにとろとろになるまでかきまぜつづける。

 とろとろに煮上ったら、メリケン粉か片栗粉をほんの少し入れてつなぎにし、テーブルの上のアルコールランプの上にこのなべをのせ、弱い火であたためながらフォークにフランスパンをちぎってさし、それにフォンデュをまきつけるようにして食べる。

 パンはもちろん食パンでもよいけれど、硬いほうがおいしいから、食パンならみみの所がいいが、コッペパンのほうがなおいい。

 パンのまわりにとろっとしたチーズがかぶさっているから、とても熱い。舌やうわあごをやけどしないようにフーフーふきながら食べるのは、寒い戸外から帰ってきたときには、有難くうれしく感じられる山小屋料理だ。

 白ブドー酒のない場合は、白ブドー酒の量の半分の水でつくる。はじめにカップ2杯半の水に少量のバタとにんにくのすったのを入れて火にかけ、あまり熱くならぬうちから5百グラムの細かく切ったチーズを少しずつ入れ、フォークでつぶすようにしながらゆっくりとかし、ドロドロになってきたら出来上がりだ。

 フォンデュを作るとき、注意することは、強い火でぐらぐら煮たたせないこと。

 この料理はあらたまった席には向かないけれど、日曜日のお昼や夜食などには、ちょっと変わって喜ばれると思う。

 日本や中華料理になべ料理は多いが、西洋料理には一つなべをつつきあって食べるという料理は少ない。その中でこのブルギニヨン、フォンデュはめずらしく食卓の上に火をおき、お互いのフォークもふれあうばかり身近に、同じものを食べるのだから、変わった料理といえるだろう。


[No.248] Re: フォンデュ 投稿者:男爵  投稿日:2013/01/21(Mon) 16:12
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> > > 石井好子:巴里の空の下オムレツのにおいは流れる 河出文庫

> >  フォンデュについては次の記事で説明します。

> フォンデュはレストランでも出すが、家庭料理としてスイス人の常食のようだ。


東海林さだおの「丸かじり」シリーズで
新宿のレストランにフォンデュを食べに行く話があったと思うが
そのときの感想は、感激するほどのものでないというふうだった(記憶なのであやしいが)。

私が思うに
寒いスイスの冬ではなく、東京で食べたから
感激がいまいち少なかったのではないだろうか。

あるいは
>  フォンデュを作るとき、注意することは、強い火でぐらぐら煮たたせないこと。

この注意書きを知らないで、煮立たせたものを食べたのではないだろうか。


その話は「ブタの丸かじり」にあったというが、機会があれば読み直してみたい。


[No.293] Re: フォンデュ 投稿者:男爵  投稿日:2013/01/26(Sat) 20:30
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みなさん  もうお忘れでしょうが......

> 東海林さだおの「丸かじり」シリーズで
> 新宿のレストランにフォンデュを食べに行く話があったと思うが
> そのときの感想は、感激するほどのものでないというふうだった(記憶なのであやしいが)。

> その話は「ブタの丸かじり」にあったというが、機会があれば読み直してみたい。

いま その本を読み直しました。

概略は下記のようでした。

この本を書いたときから20年前のこと
東海林さだおは
サトウサンペイと一緒にスイス旅行をした。

ガイドブックをたよりに
ある店に入ったが、どんな店だか覚えていない。
で結果は、そこで食べたフンデュはきわめてまずいものだった。
  コレガマズカッタ。

そこで二人は、「もう二度とチーズフォンデュを食べるのはよそう」
という会話を交わした。
これが、この本にある、フォンデュの話のタイトルの「フォンデュの誓い」である。
 ネット検索してたら、このタイトルが出てきた。

それから20年たって
著者は京王プラザで人と会って、どこかで食事をしようということになり
野村ビルの最上階のスイスシャレーに入り
はずみでフォンデュを食べることになってしまった。

トコロガコレガウマカッタ。

サトウサンペイさんに申し訳ないが
20年たてば人間の味覚も変化する。
と東海林さだおは言い訳をしている。

スイスではまずかったフォンデュが新宿ではうまかった。

私の記憶もいいかげんだった。


[No.299] 「ブタの丸かじり」 投稿者:男爵  投稿日:2013/01/27(Sun) 10:39
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> > 東海林さだおの「丸かじり」シリーズで
> > 新宿のレストランにフォンデュを食べに行く話があったと思うが

> > その話は「ブタの丸かじり」にあったというが、機会があれば読み直してみたい。

この「ブタの丸かじり」には
いろいろ面白い話が出てくる。

著者の軽妙洒脱な文章が面白い。楽しい。
(興味ある方は、このシリーズをお読みください)

さて
「ブタの丸かじり」にあるお正月に関係のあるものでは
 おせちの内紛
ですね。

時間がないから、要点だけ紹介します。

おせちの重箱のなかで、宿命のライバル、カマボコと伊達巻が陣取っている。
二人の地位は、いずれも副社長格だ。 社長はいない。いままでも社長不在でやってきた。

カマボコ派(海出身)
 酢だこ カズノコ 昆布巻き ブリ照り 海老 ゴマメ
伊達巻き(卵主体で陸出身)
 レンコン ゴボウ ニンジン 筍 しいたけ 里芋 クワイ コンニャク 黒豆
 数ではカマボコ派を圧倒しているが、大物がいない。
  カマボコ派は多士済々 カズノコあたりは立派に常務が務まるし、海老も部長ということになろう。

伊達巻き派とカマボコはの抗争は、いまだに決着がつかない。

 なお
 伊達巻きには、魚のすり身が入っているではないか、と指摘する人には
 著者は
 日本の陸上界に少しも事実がない慶応大学が、「陸の王者慶応!」と応援歌で叫んでいることをあげて
 慶応の応援歌に比べれば、伊達巻きに少々の海の部分があったとしてもいいではないかと
 強引に自分のカマボコ(海グループ)対伊達巻き(陸グループ)説を弁護している。