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ある学徒兵の死 (スカッパー) <一部英訳あり>

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2007/6/15 0:58
KyoYamO  新米   投稿数: 13
8.調査を終えて
 残念ながら、祖父の戦死の日付の裏付けが取れないまま、行き止まりとなってしまいました。しかし、ほとんど何も分からなかったところから、ここまで調べることができました。調査にご協力くださった多くの方々に感謝したいと思います。

 戦後世代のいわゆる「戦無派」に属する私には、この調査を始めるまでは、軍隊の階級名さえ知りませんでした。復員された方々の手記や公式の記録を読むうち、当時は上官の命令がすべてであったことや、その命令を回避することが許されなかった事実をはじめて知りました。現代社会の会社組織などにおいても、このような傾向は見られますが、「辞職」することで、その組織の束縛からは解放されます。ところが、戦地に送られた軍隊の中では、「いやです」と決して言えなかったことに衝撃を覚えました。兵士の不名誉は家の不名誉と直結していたことも知り、私にとっては驚きの連続でした。そして、兵士たちを率いる将の決定がその隊の命運を分けた事実も知り、決断の重みを改めて実感しました。

 今回参考にした資料により、人の記憶は薄れても、紙に書いた文書は、燃えてなくならない限り、歴史を再構築するための重要な参考になることを改めて認識しました。残務処理にあたった方々や、戦争体験をつづった手記を出された方々の記憶の鮮明さと、事実に裏打ちされた著述は、戦争を知らない私たちの世代の読者をも引き込む迫力に満ちていました。

 17戦区の佐藤少尉が息を引き取る間際に言った「・・・どうかお元気で祖国の再建を願います。」(赤松光夫氏、赤松信乗手記の中で田中軍医中尉回想録記を引用)という言葉が心に残りました。少なくとも将校以上の人たちは、この戦争が負け戦であることを認識していました。そして、敗戦国となる日本を再建しなければならない、という強い思いも持っていらっしゃったことが分かりました。現代の日本人若者にはこのような愛国心を持つ者は少ないように思います。

 戦後、日本は目を見張るような復興を遂げました。これは日本の復興に情熱を注いだ方々が多くいらっしゃったからに他なりません。再び戦争の悲劇を繰り返すまいと、がむしゃらにがんばった方々の礎《いしずえ》の上に今日の日本はあります。

 戦後62年経ち、すでに戦争の記憶をお持ちの方々のほうが少数派となってしまいました。いまや戦後世代やその子たちが日本の社会の進路を決めてゆかなければならない時代です。今回、祖父の戦死を調査したことで、将来を選択してゆくためには過去の歴史を知ることがいかに重要であるかを知りました。次世代の我々が舵《かじ》取りを間違えて、また悲惨な歴史を繰り返さないためにも、戦争体験世代の方々の記憶を語って欲しいと願っています。

おわり
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