[No.524]
「唐詩選」上・中・下
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投稿日:2011/12/12(Mon) 15:40
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せんにも書いたように、こどもの頃の我が家は、漢文教室のような観を呈していたので、こういう話では、思い出は尽きない。
岩波文庫の上巻を開くと、まず『長安一片月』が目に入る。今ではもう作者の名も題名も、ほとんど覚えていない。そこで、書店も、目次に変えて、出だしで探せるようにした方が読者に喜ばれるのではないかと思われる。これは李白の詩だ。題は「子夜呉歌」という。
劉廷芝の「代悲白頭翁」というのも、記憶にはないが、なかに出る『年年歳歳 花相似たり 歳歳年年人同じからず』は、人口に膾炙したフレーズである。安藤鶴夫の著書にも「年年歳歳」がある。
杜甫の「貧交行」の『手を翻せば雲となり手を覆えば雨』も日本人の好きな句であろう。
下巻には、『牀前、月光を看る 疑うらくは是れ地上の霜かと』で始まる李白の「静夜思」、『春眠暁を覚えず』の、孟浩然「春暁」が入っている。また『朝に辞す 白帝
彩雲の間』でご記憶だと思う李白の「早発白帝城」同じ作者の『峨眉山月歌』もよく書道展などで見かける。
現在、葡萄酒はヨーロッパが本場のようにいわれているが、『葡萄の美酒 夜光の杯』で始まる王翰に「涼州詞」がある。
いま、三巻を眺め渡して、親父の講釈が、実際に作られた唐詩のうちのごく一部だったことを知った。
下巻の巻末に、取り上げた唐詩人の小伝がついているのは、初心者には大変有難い。
* 前野直彬注解「唐詩選」上中下